「体重が減らなかった人はいない」「平均で6~7キロやせる」 最強の「やせ薬」オゼンピックとは 副作用はある?
アルツハイマーにも効果?
GLP-1受容体作動薬に腎臓や心臓への合併症を予防する効果があることは前述したが、そのメカニズムは判然としていない。
「腎臓については、アルブミン尿の抑制効果があります。糖尿病が腎臓に与える影響は基本的に5段階あり、健康な状態→アルブミン尿→タンパク尿→腎不全→透析となります。アルブミン尿を抑制することで腎臓の合併症が重症化するのを防ぐ働きがあることが明らかになっています」(同)
心臓については、
「一部のGLP-1受容体作動薬が肥満合併心不全の患者さんに対して体重減少と共に症状が改善したという結果が出ています。肝臓については単純で、体重減少で脂肪が落ち、脂肪肝が改善したということです」
そう説明するのは、国際医療福祉大学医学部教授・同三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科部長の坂本昌也氏である。
「アルツハイマー型認知症との関係については、12年ごろからその改善の可能性が示唆されていましたが、未だにほとんどが臨床研究段階にある状況です。糖尿病患者はアルツハイマーになる確率が他の人より高い。GLP-1受容体作動薬は血糖値を下げることに加えて脳に対して炎症改善などのプラスアルファの効果でアルツハイマーにも効くということは考えられるかもしれません」
リバウンドに注意
糖尿病治療に加えて痩身効果があり、腎臓、心臓、肝臓、はては研究段階ながらアルツハイマーまで……。何やら“奇跡の薬”のように思えてくるのだが、当然ながら注意すべき副作用はある。
「腹痛などの腹部症状が見られた場合には医師の指示に応じて画像検査を受けるべきです」
と、先の山田氏。
「重大な副作用としてすい炎や胆嚢炎が記され、胆石症が生じることも報告されていますが、正直に言って頻度は非常に低い。すい炎の既往歴のある方は投与に慎重になるべきではありますが、そうでない方は気にする必要はありません」
他にも、脈を速くする作用があるが、
「GLP-1受容体作動薬の試験では、心拍数が若干上がるものの、心臓病の発症を予防してくれるか、少なくとも心臓病を増やしはしないことが示されています。また、多くの研究で心不全の予防効果も示唆されていますので、GLP-1受容体作動薬の服用に伴う心拍数の増加は、特に気にする必要はないでしょう」
また、副作用ではないものの、頭に入れておいた方がよさそうなのが、「リバウンド」について。
「GLP-1受容体作動薬の服用をやめた場合、食生活に気を配らずに以前と同じ量を食べてしまうと、リバウンドしてしまいます。ただ、薬を使うことで、食事量をこれくらいにすればやせる、という学びはあるそうです。この薬はやせるという目的地に達するための手助けはしてくれますが、それ以降は個人的な努力が不可欠というわけです」(前出・久住氏)
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