ガンジス川の支流に危険な白い泡が…インドの大気汚染、水質汚染、ゴミ問題がヤバすぎる

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世界で最も大気汚染がひどい都市圏

 経済に暗い影が忍び寄る中、筆者が最も危惧しているのはインドの公害問題だ。

 インドの首都、人口3200万人を擁するニューデリーの大気の状況は年々悪化しており、毎年秋から冬にかけては特に深刻な期間だ。

 ヒンズー教徒が爆竹や花火で新年を祝う「ディワリ」から一夜明けた11月13日、ニューデリーを含むデリー首都圏の空はスモッグに包まれ、学校は軒並み休校した(11月14日付日本経済新聞)。

 スイスの空気清浄機メーカー「IQエア」の調査(インド時間11月13日午前10時時点)によれば、世界で最も大気汚染がひどい都市圏はデリー首都圏だという。

「野焼き」というこれまでの原因に加えて、石炭火力発電所からの煙や自動車の排ガスが重なっているのに、政府の対応はまったく追いついていない。大気汚染は呼吸器系疾患の原因になることはもちろん、視界の悪化で交通事故が多発するなど都市機能も麻痺させてしまう。

 下水や産業排水を適正に浄化する施設が圧倒的に不足しているため、水質汚染も目を覆うばかりの状況だ。

 ニューデリー近郊を流れる聖なるガンジス川の支流(ヤムナ川)は11月に入り、危険な白い泡に覆われている(11月10日付CNN)。白い泡の正体はアンモニアやリン酸塩など人体に有害な化学物質(毒性バブル)だという。

持続的な経済成長に公害問題の解決は必須

 インドの街中に積み上がっている廃棄物の問題も、待ったなしだと言わざるを得ない。

 当局の推計によれば、インドで毎日排出されるゴミは約17万トン。その3分の2は都市のゴミ収集サービスで処理されるが、残りの3分の1は川や海、埋め立て地に捨てられ、病気などの原因になっているという。経済が急成長すれば、ゴミの排出量は2030年までに倍増する可能性が高い(11月18日付日本経済新聞)。

 モディ政権はゴミの収集率の向上に取り組んでいるが、小手先の対応に終始しており、事態の好転は望めない状態だ。国民の「ポイ捨て」の習慣を変えない限り、「クリーン・インディア」の実現は不可能だろう。

 1960~70年代の日本が経験したように、国民の健康を害する公害問題の解決なくして持続的な経済成長は達成できない。

 インドはこれまで何度も「次の経済大国になる」と言われてきたが、残念ながら、その期待が実現することはなかった。公害問題という難問に官民挙げて取り組まない限り、「経済大国の夢」は再び未完に終わってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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