糸引く「デスマフィン」騒動で思い出す、ネット上を席巻した「食品・飲食トラブル」 伝説の「スカスカおせち」に、大人気商品への「ゴキブリ混入」問題も…

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チリメンモンスター

 結局同社は生産ラインとパッケージの見直しをし、ゴキブリ等異物が入らないような対策を約半年かけて行った。社長も生産ラインに立ち改良を重ね、製造ができないその間、社員には給料を払い続けたことも同社の好感度を上げた。それもあったことから6月の復活の際は各地のスーパーがペヤング商品を積み上げた写真をツイッターで公開したり、YouTuberが「ペヤング復活祭」などと題して新しいペヤングを食べる動画を公開したのである。

【番外編:「チリメンモンスター」クレーム騒動】
 小学生の自由研究でも人気の「チリメンモンスター」は、チリメンジャコのパッケージに混入した小さなタコやカニやイカなどを意味する。網で大量に取ったシラスイワシなだけに、その中には別のものも入っているのは仕方がないこと。

 だからこそ「ラッキーだった」的な扱いでチリメンモンスターは重宝され、ネットでその姿を公開する人もいた。だが、2017年、築地の「株式会社阿部水産」に対して異物が入っていた、と猛烈な権幕でクレームをしてきた人物がいたのだという。

食べ物の恨みは怖い

 その人物にとって許しがたいことだったのだろうが、同社は「本製品で使用しているいわしの稚魚は、えび、かに、いか、たこ、さばが混ざる漁法で採取しています。」との注意書きもパッケージに記していた。「チリモンハンター」という言葉もあるほど一部では人気のあるチリメンモンスターだが、まさかのクレームという事態になり、同社がそのことを報告したツイートは多数のRTをされ、話題となった。

 こうしてネットを騒がせた食品騒動を振り返ったが、今回のマフィンの件は「無添加」「オーガニック」的な商品の限界を指摘する声も出ていわゆる「フード左翼」と「フード右翼」の対立構造も生み出した。「食べ物の恨みは怖い」とはよくぞ言ったものである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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