糸引く「デスマフィン」騒動で思い出す、ネット上を席巻した「食品・飲食トラブル」 伝説の「スカスカおせち」に、大人気商品への「ゴキブリ混入」問題も…
デスマフィン
11月11日~12日に行われたアートイベント「デザインフェスタ」に出展した、「食品添加物不使用!」を謳う東京都目黒区の焼き菓子店「Honey×Honey xoxo」(ハニーハニーキス)のマフィンを食べた人々が体調不良を訴え、“食中毒事故”と認定された。同店は、当日販売したマフィン約3000個を自主回収すると発表。大イベントなだけに5日前から作っていたことも影響したと見られている。証言としては「納豆のように糸を引いていた」などがあった。これにより同店のマフィンは「デスマフィン」と呼ばれるようになった。そして11月21日に同社HPで「閉業」を明かした。
【画像】食中毒騒動後、突然閉業したマフィン店が発覚直後にインスタグラムに投稿していたハートマーク付きの謝罪文
最近の食品関連の事故でいえば、500人が食中毒被害を訴えた青森県八戸市の弁当店「吉田屋」も記憶に新しい。外注先がご飯の温度管理を誤ったため、冒頭のマフィン同様に糸を引いていたという。
こうした食品・飲食関連の事故はネットで大いに話題になりがちである。そこで、過去にネットを騒がせた事故を振り返ってみる。私のようにネットの論調を分析することが仕事の人間からしても、これらの盛り上がりっぷりは凄まじかった。
一つの文化が終わった
【「ささやき女将」騒動】
2007年、名店と名高い「吉兆」グループの「船場吉兆」が、消費期限・賞味期限の改竄や食材の使いまわしをしていたことが明らかになった。この際、湯木佐知子社長は、会見で隣に座った長男で役員の喜久郎氏に対し、発言内容をヒソヒソ声で伝えた。
「頭が真っ白になった」「責任逃れの発言をしてしまいました」といった助言がマイクに拾われたことから「腹話術みたいだ」といった感想を持たれた。結果的に船場吉兆は廃業に至るのだが、もしもこの「ささやき」騒動さえなければテレビを中心としたメディアが面白がらなかったのでは。そしてネットもここまでネタとして消費をしなかったのでは、と思う次第である。
【「殺人ユッケ」騒動】
石川県金沢市に本拠を置く「フーズ・フォーラス」が運営する「焼肉酒家えびす」の各店舗で2011年、ユッケを食べた客181人が食中毒症状を発症し、5人が死亡した。この時、勘坂康弘社長(当時)は記者会見でいきなり土下座をしたことも「演技がかっている」との評を受けた。
卸元の精肉店の問題も取り沙汰されたこの騒動だったが、結果的に同社は廃業し、破産手続きに移った。これ以後、各地の焼肉店ではユッケの提供を自粛するようになった。そして、2012年には牛生レバーの提供も食品衛生法に基づき、厚労省により禁止されるに至った。私の知り合いの焼肉屋店主は「杜撰な管理をするダメな店のせいで一つの文化が終わった」と嘆いていた。
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