【NHK紅白】島会長時代に本気で検討された“打ち切り話” カンフル剤もなくなって、今後どうする

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近藤真彦の唐突なトリ出場はカンフル剤の代償

 島氏はワンマンで局内外に敵が多かったことから、打ち切り論にも反発の声が強かった。「報道畑の島氏が勢力を広げようとしているだけ」という見方もあった。一方で正しかったとする意見も局内や民放内にあった。「もう耐用年数が過ぎていた」などの考え方である。

「キレ者の島氏が辞めてくれてよかった」という声も民放内には強かった。少なくとも島氏には「紅白」が大きな曲がり角を迎えていることが分かっていた。

 2004年には2部の世帯視聴率が40%を割った。昨年の2部の個人全体視聴率は23.0%(世帯35.3%)。まだ個人全体は20%を割らず、世帯も30%台を維持しているが、それは旧ジャニーズ勢を大挙出演させるなどの“カンフル剤”を打ち続けてきたからだろう。

 昨年まで5年間の旧ジャニーズ勢の出場組数は、2018年が嵐など5組(44組中)、2019年が関ジャニ∞など5組(41組中)、2020年がKing & Princeなど7組(41組中)、2021年がSnow Manなど5組(43組中)、昨年はSixTONESなど6組(44組中)。2020年は実に出場者の6分の1強が旧ジャニーズ勢だったことになる。

 その分、失ったものもある。出場歌手の人選への信頼である。2015年、当時は旧ジャニーズ事務所にいた近藤真彦(59)が19年ぶりに出場した。近藤には長らくヒットがなかったため、同事務所側の強い意向によるものというのが定説である。

 しかも、近藤は白組のトリで「ギンギラギンにさりげなく」(1981年)を歌った。納得した視聴者がどれだけいただろう。近藤の唐突な出場とトリへの抜擢はカンフル剤の代償と言えた。

今の「紅白」は韓国勢のプロモーションの場

 その旧ジャニーズ勢が今年はゼロになる。カンフル剤が切れるのだから、視聴率はこれまで通りとはいかない。「間違いなく大きく落ちる」(大手芸能事務所幹部)というのが芸能界の大方の見解だ。個人全体の20%割れ、世帯の30%割れもあるかも知れない。

 もっとも、視聴率が大きく落ちようが、大騒ぎする話ではない。もともと旧ジャニーズ勢に頼りすぎていたし、なにより今の時代には合わない番組なのだから。

 そんなことはテレビのプロであるNHKの制作者たちも分かっている。だから本音では「難しい番組」「視聴率が獲れる番組ではない」などと口々に漏らす。歌が共有されず、流行歌もない時代の「紅白」は、無理ゲー(クリアするのがほぼ不可能なゲーム)なのだ。

「紅白」出場の選から漏れたアーチストのことを「落選」と呼ぶ慣習があるが、今年は事情が違う。「視聴率が落ちるのは確実だから、戦犯扱いされることを嫌がり、出演依頼を断った者がいる」(同・芸能事務所幹部)という。

 一方で韓国アイドルは出場依頼に次々と応じるが、これには理由がある。主な狙いは日本市場の拡大だ。韓国は人口5100万人程度で音楽市場も小さい。「紅白」に出て日本市場を拡大できたら、メリットは大きい。今の「紅白」は韓国勢のプロモーションの場でもある。

 2004年に「紅白」のプロデューサーが巨額の制作費を着服していたことが発覚した際も打ち切り論が巻き起こった。旧ジャニーズ勢が44年ぶりに出場しない今年も「紅白」にとっては一大事。これを機にムリゲーの大胆な見直しや打ち切りを検討してもいいのではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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