【NHK紅白】島会長時代に本気で検討された“打ち切り話” カンフル剤もなくなって、今後どうする

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 大晦日の「NHK紅白歌合戦」の出場者について不満が噴出している。例年のことだ。今年は旧ジャニーズ勢が出場しないことから、なおさら。そもそも「紅白」は約30年以上も前に“耐用年数”が過ぎている。その後はカンフル剤を打ちながら息を繋いでいるに過ぎない。

全世代に向けた大型音楽番組は無理

 今の音楽界には、1970年代における山口百恵さん(64)やピンク・レディ、1980年代の松田聖子(61)や中森明菜(58)のような存在がいない。全世代に認知されたアーチストが不在なのである。みんなが知る流行歌も生まれない。この状況が30年以上続いている。

 そんな時代に「紅白」が強い存在感を示し、高視聴率を稼ぐのは土台無理。誰もが知るアーチストが一堂に会し、流行歌を歌うというのが、1951年に生まれた「紅白」の趣旨なのだから。自分の知らないアーチストが出てきて、聴いたことのない楽曲を歌われたら、誰だって関心を持ちにくい。

 全世代に認知されたアーチストがいないから、現在の「紅白」は若者層が好むアーチストとミドル層以上によく知られるアーチストを数十組ずつ出場させている。妥協策だ。今年の場合、初出場組だと、若者層向けのアーチストは韓国の男性アイドルグループ・Stray Kidsら。ミドル層以上向けは伊藤蘭(68)である。

 これでは観る側から不満が出る。妥協に過ぎないのだから。伊藤蘭を待望視する若者層はごく少数だろうし、初めて目にする韓流アイドルグループに聴き惚れるミドル層以上はほとんどいないはずだ。

 どの世代にも知られているアーチストが存在せず、流行歌もない時代には、「紅白」のように全世代をターゲットにする大型音楽番組は成立しないのである。

世代別にターゲットを絞る大型音楽特番

 民放にも大型音楽特番はあるが、全世代型では成立しないことが分かっているから、ターゲットを若者層、またはミドル層以上に絞っている。フジテレビ「FNS歌謡祭」などは若者向け、大晦日の夜に放送されるテレビ東京「年忘れにっぽんの歌」はミドル層以上を狙っている。

 それでも視聴率はそう獲れない。昨年12月7日放送の「FNS歌謡祭 第1夜」の視聴率は個人7.5%(世帯11.9%)、「年忘れにっぽんの歌」は個人3.7%(世帯6.2%)に留まった。世代のターゲットを絞ると、今度は観る側の人数が限られるから、高視聴率は望めないのである。

 歌が世代を超えられなくなった。なぜか。その第1の理由は音楽を聴く環境の変化である。1980年代までの音楽はテレビ、ラジオ、有線放送、レコードなどを通じて聴くものだった。誰かと一緒に聴くケースがほとんど。歌は共有されていた。テレビやラジオ、有線放送から流れた音楽を嫌でも聴かなくてはならない機会も多かった。

 だから、小学生であろうが、石川さゆり(65)の「津軽海峡・冬景色」(1977年)を口ずさめた。故・竜鉄也さんによる演歌「奥飛騨慕情」(1980年)や佳山明生(72)による同「氷雨」(リリースは1977年、紅白出場は1983 年)も知っていた。

 一方で高齢者もサザンオールスターズの「Ya Ya(あの時代を忘れない)」(1982年)やチェッカーズの「涙のリクエスト」(1984年)などが分かっていた。好むと好まざるとにかかわらず、耳に飛び込んできたためである。その分、世代を超えて愛される流行歌も生まれやすかった。

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