「もう一人産みたくなる」 奇跡の保育園「やまなみこども園」は何がスゴい?
親たちの「第二の青春」
これらの園の活動において、保護者たちは「第二の青春」を楽しむかのように積極的に参加する。
夏の夜に行われる夕涼み会は、子供向けの夏祭りというより、親子みんなが大はしゃぎして感動するための、大学の文化祭と地域の祭りを掛け合わせたようなイベントだ。母親たちは何週間も前から会の催しで使うコスプレ衣装を用意し、バンドを組んだり、ダンスを練習したりする。そして「NO MUSIC NO YMNM(YAMANAMI)」の看板を掲げ、手作りでステージを設置する。
当日、ステージに立った母親たちがカツラと衣装に身を包んでリズミカルな歌を歌うと、客席の父親や子供は胸を高鳴らせて、ビールやジュースを持ったまま一緒になって踊り始めた。きょうだいの卒園生や、おんぶされた赤ん坊も一緒だ。途中で土砂降りの雨が降っても、親子はずぶ濡れになって歓声を上げ、はじけんばかりの笑顔でアンコールを叫びつづける。
こうした光景を目の当たりにすると、親が子供と同じ目線で笑い、喜び、幸せをかみしめているのがわかる。親は子育てを通してまさに第二の青春を味わっている。これをしたいから園の活動に深くかかわろうとするのだ。
また、こうした人間関係は、自然とプライベートにも広がっていく。複数の家族で旅行へ行くとか、バーベキューをするとか、忙しい時に子供を預け合うといったことが日常的に行われるのだ。
道枝は言う。
「保護者みんなが大きな家族みたいな関係なんです。子育ての一部を園に任せるとか、各家庭がそれぞれ子育てをしているというより、やまなみこども園を中心にみんなで子供を見守り、育て、楽しんでいるのです」
「大きな家族の一員になったような安心感」
筆者が元保護者に話を聞いた時も、そのことを強く感じた。
この家庭では、父親が単身赴任をしていたため、母親が実家の用事等で家を離れなければならない時は、友達の家族が子供たちを数日間家に泊まらせてくれたという。また、別の家族が、子供たちを旅行へ連れて行ったこともあったらしい。その元保護者は次のように言っていた。
「やまなみにいると、大きな家族の一員になったような安心感があるんです。自分たちだけですべてを背負うのではなく、みんなで助け合って支え合って子育てをしていける。だから、何が起きても大丈夫という安心感があります」
[4/6ページ]