「もう一人産みたくなる」 奇跡の保育園「やまなみこども園」は何がスゴい?

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「言葉やアイデアが止めどなく出てくる」

 次々と湧き出る子供たちの独創的な発想に驚いていたら、隣にいた先生が話しかけてきた。

「子供って新しいものを見て心が刺激されると、たくさんの言葉やアイデアが止めどなく出てくるんです。うちの園では、私たち職員だけじゃなく、保護者や地域の方がそうやって子供を刺激してくれる。今回のサワラの解体も、保護者の発案なんですよ」

 保護者の方から「子供たちに見せたい」と言って、自前で用意したサワラを運び込んだのだという。

 保護者が一方的に園に保育を委託するのではなく、保護者を含めた地域のあらゆる人たちが子供とかかわり、感動を共にし、成長していくのが、この園の特色なのだ。

主体性を刺激する

 現在、やまなみこども園は、NPO法人「ひかるつめくさ」のもとで、「ポランのひろば」と小規模保育事業A型「ころぼっくる」(定員19名)とともに運営されている。

 始まりは、1976年に初代園長の山並道枝(76)が知人と古いアパートを改装してオープンした認可外保育園だった。当時の熊本では、乳児保育や長時間保育の谷間を、認可外保育園が埋めていた。

 開園して間もない頃、道枝は当時主流だった「設定保育(一斉保育、計画保育)」と呼ばれる保育を行っていた。これをすれば子供はこう成長するという計画を職員あらかじめ立て、それに準拠して一斉に何かをやらせる方法だ。だが、園の責任者として子供たちと向き合っているうちに、だんだんとこれでは限界があるのではないかと感じるようになった。

 そこで道枝は日本全国の保育園のいろんな取り組みを勉強し、大人が教え込むのではなく、自然や音楽や遊びの中で主体性を刺激し、成長を促す保育へとやり方を変えていった。

 散歩の途中で花の蜜をなめながら虫を追いかける、ピアノに合わせて全身で自分を表現する、先生や保護者とともに田んぼで泥だらけになるような共有体験をする……。そうした経験を通じて、子供は見違えるように生き生きとし始めた。

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