「春菊天そばのボタンが見つからずパニック」、「後ろに並ぶ常連客の舌打ち」…ファストフード店で急増する“タッチパネル式券売機”は本当に効率的か?

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「店員に注文」という選択肢もあればいいのに

 この手のタッチパネル券売機は常連にとっては使い勝手が良いだろう。だが、たとえば5人が一気に並んだ場合、1人でも不慣れな者、初めてその店に来る者がいたら途端に列の流れが停滞する。慣れてない客の多くは、常連客からのイライラオーラやら舌打ち攻撃に耐えてまで券売機で注文を終了させるだけの精神力を持ち合わせていない。挙句の果てには、5000円札・1万円札が使えなかったり、自身が使う電子マネーが対応していなければ、さらに慌てることになる。

 結果的に私も彼女も「あの店にはもう行かないようにしよう。ちょっと常連からの『圧』が凄すぎるし、食券機にしてもタッチパネル式ではなく、分かりやすいボタン式の店にしよう」という結論になった。

 もちろんタッチパネル式にしても、店内に2台あるとこのようなことは回避できるが、冒頭で紹介したように、券売機は本体価格がかなり高いのだ。自動車が1台買えるような金額だ。店側としてもこれらの導入には慎重になることだろう。

 あと、食券・セルフレジ方式だとカスタマイズがしづらい面もある。家系ラーメンのように食券を渡した時に「固め・濃いめ・多め」のような注文をすることはあるものの、チェーンではなかなかしづらい。フードロスもあるわけで、「店員に注文」という選択肢もあればいいのにな、と思った次第である。当然自分の注文は食券機・セルフレジ使用客の後で構わないので「わがまま言いやがってw」や「この情弱がw」などとは言わないでほしい。もちろん、チェーン居酒屋やファミレスの卓上にあるタブレット型発注機器に対して文句はない。これらは別の客を待たせているわけではないのだから。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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