来日アーティストはなぜ「ニッポン最高!」と口にするのか
「ああいう店で雇われている女性には、こっちが服を脱いだ途端、腕や足の数が増えているんじゃないだろうか、と思わせられたね。彼女たちが俺にしたのと同じことが自分でも出来たなら、俺は家から出ないよ」(『ポール・スタンレー自伝 モンスター~仮面の告白~』(ポール・スタンレー、ティム・モーア著/迫田はつみ訳/増田勇一監修/シンコーミュージック・エンタテイメント刊)
同じキッスのジーン・シモンズもファンの歓迎ぶりや新幹線への驚きとともに、日本女性との親密な交流を自伝で振り返っている。
差別がない
ロック・スターたちの回想だけを見ていくと、若干その日本愛に不純なものを感じる方もいるかもしれない。ただ、こうした体験以外にも日本を好む理由はあるのだという。
『不道徳ロック講座』の著者、神舘和典さんはこう語る。
「黒人ジャズ・ミュージシャンに話を聞くと、アメリカのとくに南部ではレストランに入れてもらえなかったり、トイレを使わせてもらえなかったり、長い間差別されてきたそうです。サックス奏者、ソニー・ロリンズによると、世界的にレジェンドの扱いを受けるようになっても、飛行機のファースト・クラスに搭乗すると、CAさんからあからさまに奇異の目で見られると話していました。しかし、日本やフランスでは音楽そのものやキャリアに対してきちんとリスペクトされると話していました。こういう話を聞くと、親日家になる気持ちが理解できました。
また、かつてはライブのときの客席がおとなしすぎると言われましたが、今はロックでは盛り上がりますし、ジャズにじっくりと耳を傾ける態度は好感を持たれるケースが多いようです」
ミック・カーンは前述の自伝の中で、イギリス本国では人気バンドのサポートアクトとして出演した際、観客からツバや痰をはきかけられて、体も楽器もヨダレと痰まみれになった経験があったと怒りをもって振り返っている。もちろんこんなことはどんなアーティストのステージであっても日本ではまず見られない光景である。
最近では韓国人DJの体に触ったなどという不名誉な事件も起きたが、期待に応えて日本人らしく、きちんとしたおもてなしをすることが望ましいのは言うまでもない。