来日アーティストはなぜ「ニッポン最高!」と口にするのか
「ニッポン、サイコー!」
コロナ禍へのうっ憤を晴らすかのように11月以降、海外大物アーティストの来日が続く。
11月のコールドプレイを皮切りに、1月にはブルーノ・マーズ、2月にはクイーン+アダム・ランバート、テイラー・スウィフトがいずれも東京ドームで公演を行う予定となっている。
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こうしたライブでアーティストは必ずといっていいほど、「ニッポン」への愛情や思いを口にするのだが、果たしてどこまでそれを信じていいものか。
彼らが韓国では「コリア、サイコー」、アルゼンチンでは「アルゼンチン愛している」などと言うのは間違いない。
ただ、だからといって彼らの「日本愛」を単なる社交辞令だと片付ける必要はない。
ある種の人は「日本だけ特別なんて思わないほうがいい」と冷笑するかもしれないが、実際に強い日本愛を持つアーティストは決して珍しくないのだ。
「社交辞令ではない」ということの証として有効なのは、彼らのインタビューや自伝かもしれない。
特に自伝は日本での出版を前提としておらず、本国、英語圏での出版物なので、日本にだけリップサービスをする必要はない。従って、そこで語られる「日本愛」には本音が詰まっていると見てもいいのではないか。
日本を離れたくない
「日本こそ僕の本当の居場所である。イギリスを含むこれまで旅したどの国とも違う影響を受けたのだから。日本からの影響を全身全霊に取り込んでしまった僕は、自分の感情の大きな固まりを置き忘れたまま出国したのも同然であり、帰国後、感傷から立ち直るまで相当の時間を要した」
こんな賛辞を送っているのは、日本で絶大な人気を誇った英国バンド「JAPAN」のベーシスト、ミック・カーンである。(『ミック・カーン自伝』ミック・カーン著/中山美樹訳/リットーミュージック刊)
本国での評価がひどく、経済的にも恵まれなかったところで日本に来たらいきなり大スターとして扱われた、という状況を割り引く必要はあるだろう。彼の自伝では、金銭的に苦しかったという話が何度も出てくる。ファンなら涙を誘われるに違いない。
しかし、それを考慮してもなお、彼が日本に強い愛情を抱いたのはゆるぎない事実であろう。同書の中では、何度も日本についての好意的な文章が現れる。
「僕たちの言動をそのまま素直に受け入れ、僕たちの見た目に起因する皮肉や偏見もなく、逆に最大級のリスペクトを向けてくれた日本」
「僕は日本を離れると考えただけで耐えられなかった。最も僕を必要としてくれている場所からどうして離れないといけないのか理由がわからず、飛行機の中では涙があふれて仕方なかった。日本は中毒症状を起こす作用を持った国だ。これは僕だけではない。多くの人が同じことを言っているのを実際に耳にしている」
ここまで喜んでくれていたことを知れば、当時歓声をあげていたファンたちも報われるというものだ。
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