【ブギウギ】東京編に移って視聴率も上昇気流に…鮮明になりつつある作品のメッセージとは
「ブギの女王」と呼ばれた昭和の人気歌手・笠置シヅ子さんをモデルとするNHK連続テレビ小説「ブギウギ」が、放送開始から1カ月半が過ぎた。作品のテーマ、メッセージが鮮明になりつつある。それは「歌を始めとするエンターテイメントの力」である。
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戦争とコロナ禍を重ね合わせた?
歌で空腹は満たされない。そんなこともあって、戦時下は歌が片隅に追いやられた。笠置さんをモデルとする主人公・福来スズ子(趣里・25)も苦しい立場に置かれつつある。歌の不遇期だ。
しかし、敗戦後の絶望的な空気を吹き飛ばしたのも歌。並木路子さんの「リンゴの唄」(1946年)や、羽鳥善一(草なぎ剛・49)のモデルになった服部良一さんがつくって笠置さんが歌った「東京ブギウギ」(1947年)などである。
このドラマの制作は2021年に動き始めた。コロナによる緊急事態宣言が4回発令された年だ。大型フェスティバルを含む多くのライブが相次いで中止や延期となった。開催を望むアーティストやファンは白眼視された。戦時下と似ている。
おそらく制作陣はコロナ禍を意識し、歌が消える時代の不幸、歌を始めとするエンターテインメントの力を表そうと考え、このドラマを企画したのだろう。「歌を侮るな」といった思いがあるのではないだろうか。
放送時期を大晦日の「NHK紅白歌合戦」に重なる年度の下期にしたのも「ブギウギ」が歌の力をテーマにしていることをアピールするために違いない。趣里の母で元キャンディーズの伊藤蘭(68)のソロとしての初出場も決まり、お膳立ては整った。
今年の「紅白」のテーマは「ボーダレス-超えてつながる大みそか-」。伊藤と趣里が共演すると、まず世代のボーダレスが実現する。そして2人が「東京ブギウギ」を歌えば、時代のボーダレスにもなる。
「紅白」は現場で約10年取材したが、その経験からすると、おそらく、この演出は実現する可能性が高い。そうでないと、わざわざ伊藤が出る意味が希薄になってしまう。
東京編で視聴率アップ
「ブギウギ」のほうは11月2日放送の26回から東京編になったが、以降は流れが格段に良くなり、面白みも増した。それは視聴率にも歴然と表れている。
大阪編はやや苦戦し、その最終日だった11月3日の25回は個人全体8.2%(世帯14.2%)と先行きを心配させるほどの数字だった。しかし、東京編になってからの同17日放送の35回は個人全体9.6%(世帯17.0%)と番組最高を記録。歴代の連続テレビ小説と比べても高水準だ。東京編はこの日のみならず、全体的に視聴率が高い。上昇気流に乗った。
大阪編は欲張りすぎた嫌いがある。スズ子の少女時代を2週で描いた後、3週にわたって、梅丸少女歌劇団(USK)劇団員によるストライキ、スズ子の出生の秘密の発覚、USKの先輩である大和礼子(蒼井優・38)の死が映し出されたが、積み荷オーバーという気がした。
その点、スズ子が梅丸楽劇団(UGD)に移ってからの東京編はすっきりしている。スズ子の演出家・松永大星(新納慎也・48)への片思い、梅丸のライバルである日宝への引き抜き騒動などがスパイス的に織り交ぜられたものの、中心はスズ子が大歌手になるまでの歩みに絞られている。
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