吉野家「468円」、すき家、松屋「400円」…物価高なのに「牛丼並盛」はなぜ値上げしない? 専門家が指摘する「ラーメン業界との違い」

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 日本でも物価高が進むにつれ、X(旧Twitter)では「牛丼が安すぎる」という投稿が増えている。11月17日現在、牛丼並盛の税込価格は、吉野家が468円、すき家と松屋が400円となっている。

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 具体的にXのポストを見てみると、《ロサンゼルスの吉野家の牛丼は10ドル。約1500円。468円は安すぎる》、《牛丼屋、どこの店も飯のクオリティの高さの割には値段が安すぎる》──という具合だ。

 担当記者は「原材料費や光熱費の高騰で価格が上昇しているラーメンとは対照的です」と言う。

「総務省の調査によると、今年2月のラーメンの平均価格は609円。前年同月比で6円上昇し、調査を始めた2000年以降で最高額となりました。ちなみに、2010年の平均価格は594円です。また、ラーメンの場合は高級化路線に舵を切ったところも目立ち、5月に『らぁ麺 飯田商店』がラーメンを1600円、つけ麺を2000円に値上げし、テレビでは『高いか安いか』の論争が起こりました。都内の店では、1杯1万円という極端な値段で話題を呼んでいるところもあります」

 望むと望まざるにかかわらず、ラーメン業界は原価の上昇分を価格に転嫁しているところも少なくないようだ。一方、牛丼大手3社は並盛が400円台のまま。Xでは従業員へのしわ寄せなどを心配する投稿も目立つ。

 だが、日本人の“購買力”を考えると、3社の経営判断が間違っているとは言えないようだ。エデンレッドジャパンが6月に発表した「ビジネスパーソンのランチ実態調査2023」を見ると、衝撃的な内容に驚かされる。

週4日、ランチを抜く人

「同社は企業に食事補助サービスを提供しており、毎年、ビジネスパーソンのランチ事情を調査しています。調査対象は、役員を含む経営者と人事担当者が各150人、一般社員300人。ランチ代の平均は400円となり、昨年の436円より大幅ダウン。『昨年から家計が苦しいと感じていたが、今年からさらに苦しく感じるようになった』との回答は42・7%、『ランチ代が減った』との回答は38・3%に達しました」(同・記者)

 これだけでも日本人の厳しい懐事情が浮かび上がるが、さらにインパクトの強い調査結果がある。

「勤務日にランチを食べないことがある」という回答が25・3%だったのだ。しかも、「週4日以上食べない」という人は26・7%。昨年は7・7%だったから急激に増加したことがよく分かる。戦前の欠食児童を彷彿とさせると言っても過言ではないだろう。

 フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は「牛丼大手3社を取り巻く状況は、まさに日本経済の縮図でしょう」と指摘する。

「例えば吉野家は一部の店舗を除いて、定食のご飯はお代わり自由です。先日、私が吉野家に行った際も、何人もの若い男性が何回もお代わりをしていました。その食べっぷりから『ひょっとすると、朝昼晩の3食分を食べているのかもしれない』と思いました。今や牛丼大手3社は単なる外食産業ではなく、社会インフラに等しい存在です。安くて美味しい牛丼を必要としている消費者の数は桁違いで、値上げは非常に難しいでしょう。もし値上げするという話になったら、電気やガス、水道の値上げと同じだけの衝撃があると思います」

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