市民ボランティアはゼレンスキーも政府も全く信用していなかった…食糧不足について、彼らが明かした原因とは【ウクライナ最前線レポート】

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食料や装備が不足する理由は「汚職」と

 マックスさんは、兵士への支援にも力を入れている。東部ドニプロ市にある彼の事務所には、兵士への冬用靴下や使い捨てカイロ、止血帯、医薬品などがところ狭しと置かれていた。戦闘の合間に食べるスナックは、ドローンで運んで塹壕に投下するという。なぜ民間のボランティアが、そんなことまでして軍隊を支援しなければならないのか。

「食糧や装備など、みな不足していますから」。それはなぜ? 支給されていないのですか? とつづけて問うと、マックスさんの答えは一言、「汚職です」。必要な物資が途中で消えて前線まで届かないのだという。ウクライナ政府の財政がひっ迫している事情もあるが、前線の物資不足は汚職が原因だと多くの国民は信じている。

 汚職の蔓延は、ウクライナがEUに加盟できない大きな理由にもなっている。「腐敗認識指数ランキング(2022年トランスペアレンシー・インターナショナル)」によると180カ国中、清潔度でウクライナは116位、ロシアは137位といい勝負。ゼレンスキー大統領も汚職撲滅を公約に当選したが、まだまだ改善されていないと国民の目は厳しい。9月にはレズニコウ国防大臣が解任され、これも汚職がらみの人事だと噂されている。

 マックスさんたちボランティアは、政府も大統領も当てにせず、自分たちの力で戦争を支えようとしている。かつてナチスと戦ったレジスタンス運動を想起した。ウクライナの防衛戦争は、民衆の自由への強い意志に支えられた国民総抵抗運動の様相を呈している。

高世 仁(たかせ・ひとし)
ジャーナリスト。著書に『拉致-北朝鮮の国家犯罪』(講談社)、『チェルノブイリの今:フクシマへの教訓』(旬報社)などがある。2022年11月下旬にはアフガニスタンを取材した。

デイリー新潮編集部

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