市民ボランティアはゼレンスキーも政府も全く信用していなかった…食糧不足について、彼らが明かした原因とは【ウクライナ最前線レポート】
自宅が破壊されても町を離れられない理由
ウクライナ軍は6月以降、ロシア軍に対して反転攻勢をかけており、東部戦線と南部戦線で連日激しい戦闘を行っている。南部戦線では、ウクライナ軍が少しずつではあるがロシア軍から支配地を奪還しているという。10月下旬、南部ザポリージャ州の前線へと向かった。
【写真を見る】前線まで6km地点で“地下暮らし”する高齢者、砲声の中で物資を配布する20歳、53歳の志願兵…それぞれの形で戦う人々
フリアポレという町は前線から6km。ロシア軍の砲爆撃で徹底的に破壊され、いたるところに瓦礫の山ができていた。町の半数の建物が破壊されたとされ、多くの集合住宅は窓やドアが爆風で吹き飛び、住めるような状態ではない。1万3500人だった町の人口はいま2300人まで減少、80%の人々が他の町に避難しているという。
砲撃音がとぎれぬ町の通りに人影が見えた。自転車で荷物を運ぶ60代の女性だった。ここは危険なのになぜ他の場所に避難しないのかと尋ねると、「わずかな年金しかないので避難できない」との答えだった。避難した場合、公的な支援として支給されるのは、大人1人に生活費として初めの3カ月は日本円で約2万3000円、4カ月目からはわずか約8000円である。これでは、月1万円から2万円の年金で暮らす高齢者は、避難先で生活を維持できる見込みがないという。
国民それぞれが原則、「自己責任」で戦争に対応せざるをえないのだ。余裕のある人、親族や知り合いがいる人は国外に逃げることもできるが、自宅が破壊されても土地を離れられない人もいる。非常時には命の格差も表に現れてくる。
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