藤井聡太八冠が乗りたいと熱望する鉄道路線「山線」とは? 大勝負の前に“乗り鉄”を楽しむ様子が

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あえて大勝負の前に

「ここ数年、北海道の鉄道は災害や利用者減少を理由に廃止が進んでいますから、今のうちに藤井八冠も山線に乗っておきたいとの思いが強いのでは」

 と解説するのは、日本政治思想史が専門で、鉄道に造詣が深い「鉄学者」としても知られる放送大学教授の原武史氏である。

「明治時代に開通した現存する道内最古の主要幹線で、長崎の軍艦島などと同様、貴重な日本の近代化遺産です。なるべくトンネルを掘らず自然に逆らわない線形が維持されていて、シラカバやエゾマツ、トドマツの原生林や、羊蹄山などの雄大な自然を車窓から楽しめます。トンネルばかりの新幹線とは違う、汽車旅の醍醐味が味わえる貴重な路線といえます」

 今年に限ってみても、藤井八冠は日光での対局に初めて東武鉄道を使い、徳島での対局の際にも瀬戸大橋線を利用するなど、あえて大勝負の前に“乗り鉄”を楽しむ様子がうかがえる。

 原教授はこう指摘する。

「流れる車窓の景色を見ていると自ずと開放的な気分になりますからね。藤井八冠にとっても、日常とは違う脳の部分が刺激され、ひらめきを生み出す源泉になっていると思いますね」

 希代の棋士にとって「鉄分」は欠かせない栄養となっているのだ。

週刊新潮 2023年11月23日号掲載

ワイド特集「木枯らしに抱かれて」より

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