マキロイがPGAツアー選手会理事を退任 「やるべきことが多すぎる」の裏にある深い理由

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 近年、PGAツアー選手たちのリーダー的存在と言えば、北アイルランド出身の34歳、ロリー・マキロイこそがその筆頭だった。しかし、マキロイは11月14日(米国時間)に突然、PGAツアーの選手会理事を辞任する意向を発表。欧米のゴルフ界に衝撃が走った。辞任の裏には何があるのだろうか。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

選手会長としてのリーダーシップ

 メジャー4勝を含むPGAツアー通算24勝を挙げてきたマキロイは、自身の実績を積み上げる一方で、2019年から2021年は選手会のメンバーとして尽力し、2021年には選手会会長も務めた。

 2022年からは選手会理事に就任し、サウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」の支援を受けて創設されたリブゴルフに対する意見や姿勢について、PGAツアー選手を代表して発するなどアクティブな活動を行なってきた。リブゴルフから高額な移籍料をオファーされたスター選手たちが次々にPGAツアーから去っていく中、マキロイはPGAツアーに誰よりも忠誠を誓い、選手たちに団結を呼びかけた。

 今年6月にPGAツアーのジェイ・モナハン会長とPIFのヤセル・ルマイヤン会長が統合合意を電撃的に発表した直後には、水面下で交渉が行われていたことも、合意に達したことも、何一つ知らされていなかったPGAツアー選手たちが怒声を上げて、米ゴルフ界は混乱状態に陥った。その際もマキロイは、選手たちの声をまとめ上げ、今後は選手たちに諮った上で物事を決定することをモナハン会長に約束させるなど、強いリーダーシップを発揮してきた。

 そうした中、欧州のDPワールドツアーの今季最終戦に出場するためドバイに赴いていたマキロイは、同大会開幕直前に文書で理事から退く意向をPGAツアーに通達。米ニューヨークタイムズ紙がいち早く報じ、ゴルフ界に衝撃が走った。

 マキロイ退任によりPGAツアーの選手会理事は、パトリック・カントレー、チャーリー・ホフマン、ピーター・マルナチ、ウェブ・シンプソン、そしてタイガー・ウッズの5名となり、近日中にマキロイに代わる新理事が選出されることになる。

「やるべきことが多すぎる」

 それにしても、あれほど熱心に理事職を全うしていたマキロイが、なぜ突然、辞任したのか。

 マキロイから通達文書を受け取ったモナハン会長は「マキロイはプロフェッショナルとパーソナル、双方において自分が追求すべきことに集中したいと願っている」と語っていた。マキロイ自身は、DPワールドツアー選手権の初日のラウンド後、理事を辞任した真意を欧州メディアにこんなふうに語った。

「今の僕にはやるべきことが多すぎる。そして、全部はできないというところまで来た」

 課題山積で飽和状態なのだとすれば、優先順位を付けて絶対的にやるべきことを取捨選択するしかない。

「もうすぐ2024年になる。4月になればマスターズも他のビッグ大会も始まる。僕はそっちに貴重な時間とエネルギーを注ぎたい。(PIF関連の)ミーティングに僕が十分な準備もできない状態で参加するより、しっかり準備して参加できる他の選手が理事として臨むほうがずっといい」

 自分の最優先はマスターズ。マキロイがそう考えることは、きわめて自然な成り行きである。マキロイはメジャー4勝を挙げているが、マスターズのタイトルだけはいまなお獲ったことがない。マスターズを制することができれば、夢にまで見たメジャー4冠。キャリア・グランドスラムが達成される。

 マキロイが最後にメジャー大会で優勝したのは2014年の全米プロゴルフ選手権だった。あれから間もなく10年が経過しようとしているが、その間、彼はメジャー優勝から遠ざかっている。

 来年の春には35歳のバースデーを迎えるマキロイに、トッププレーヤーとして残されている時間は決して長くはない。そう考えると、そろそろマスターズ制覇とキャリア・グランドスラム達成に向けて集中したいと願うこと、そのためにPGAツアー選手会理事を辞任したいと思うことは、「なるほど」と頷ける。

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