「ビッグモーター」聴聞欠席でも粛々と進む“救済劇”の全貌 伊藤忠「支援検討」本当の理由と、ビッグモーター社内で囁かれる「創業家排除はムリ」の声

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 11月21日、自動車保険の保険金不正請求問題をめぐり、金融庁が中古車販売大手「ビッグモーター」側の意見を聞く「聴聞」を実施したが、同社は欠席。金融庁は30日付でビッグモーターの保険代理店登録を取り消す方針だ。そんな“瀕死”寸前の同社の「救済」に名乗りを上げたのが大手総合商社の伊藤忠商事。その「真の狙い」とビッグモーター社内に広がる“意外な反応”の裏側を探った。

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 渦中の栗を拾うどころか、みずからのブランドイメージすら傷つけかねない一手に出た伊藤忠商事の思惑を全国紙経済部記者がこう解説する。

「伊藤忠は高級輸入車販売の『ヤナセ』を子会社に持ち、『ニッポンレンタカーサービス』を傘下におく東京センチュリーの筆頭株主です。また今回、伊藤忠のほか企業再生ファンドとともに、支援を検討する3社連合に加わった子会社の伊藤忠エネクスは中古車販売やガソリンスタンドの運営などを手掛けるエネルギー商社で、業界内では“事業の親和性は高い”と評価されています」

 他にも伊藤忠は、イギリスのタイヤ小売最大手「クイックフィット」を2011年に買収。さらにグループの連結子会社に自動車保険も取り扱う「ほけんの窓口グループ」を抱える。

「ビッグモーターがこれまで謳ってきた“ワンストップサービス”、つまり中古車の買い取り・販売、修理、板金・整備、車検、保険といったサービスの大半に関連する事業を伊藤忠グループも行っており、買収による相乗効果がデメリットを上回ると判断した模様です」(同)

焦点は「過去との決別」

 伊藤忠は「再建支援」の可否を来年春までに判断する方針で、これから本格的な資産査定が始まる予定だ。現在、その伊藤忠内で検討されている支援の具体像の一つが、前述のワンストップサービスの事業から必要なものだけをピックアップ。さらに「会社分割」を行った後に出資する――といったイメージという。

「伊藤忠にとっては、ビッグモーターが全国に擁する約250の店舗と約130の工場も大きな魅力です。このネットワークを吸収するだけでも、自動車関連の事業基盤を一気に整備・強化することができる。おまけに買収にゴーサインが出たとして、いまなら“破格の最安値”で買えることも判断を後押ししたと見られます」(同)

 ただし伊藤忠側は支援の検討に際し、「創業家の影響力や関与の排除」を条件に挙げており、これについてはビッグモーター側も同意しているという。

「損保各社への自動車保険金の水増し請求や不正な車検・整備が横行した背景に、創業者で前社長の兼重宏行氏が敷いた過剰なノルマと成果主義、未達成の部下に容赦なく降格を命じる“恐怖政治”があったとされます。仮に買収となった際、伊藤忠側が株主などから突き上げを食らわないためにも“過去との決別”の演出は大前提だったといいます」(同)

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