中国で未完成のまま放置されているマンションは2000万戸…不動産危機→金融危機は起きるか
「不動産市場の低迷が社会不安の要素」となる可能性
地方政府の主な財源である土地使用権の売却収入も減る一方だ。10月は前年同月比25.4%減と、9月の同21.3%減から下落幅が拡大した。財政悪化に伴う公務員らの給与削減の動きがさらに進むことは確実視されており、個人消費のさらなる冷え込みは必至だろう。
気になるのは「不動産市場の低迷が社会不安の要素となる」との指摘が出ていることだ。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は11月18日、「中国で未完成のまま放置されているマンションは約2000万戸に上るが、住宅引き渡しの遅延問題が社会の安定を脅かす可能性がある」と報じた。
不動産開発企業の資金繰りの悪化に起因する未完成マンションの問題は深刻だ。約2000万戸の未完成マンションを完成させるためには約3兆2000億元(約64兆円)の資金が必要だが、不動産開発業界には巨額資金を捻出できる力はない。
2年前に経営破綻に陥った不動産開発大手・恒大集団の再建の目途が立っていない中、最大手の碧柱園まで窮地に追い込まれている。
だが、この問題を放置すればするほど、新規マンションの引き渡しを待つ多くの国民の間で不満が募り、来年以降、その怒りがいつ爆発してもおかしくない状況になるという。
将来不安に備えて資金確保に走る金融機関
筆者は「不動産市場の低迷は金融危機という最悪の社会不安をも引き起こしてしまうのではないか」と危惧し始めている。
中国政府は11月に入り、重い腰を上げて碧柱園の救済に乗り出し、中国保険大手・平安保険に碧柱園の支配株主になるよう求めた。だが、これが売り材料になって株価が急落した平安保険は、政府の要請をにべもなく断った。
政府のメンツが丸つぶれになったばかりか、市場関係者は「不動産開発大手の破綻が金融システム全体にとって大きなリスクとなる」ことを問題視するようになってしまった。
中国の金融機関は将来不安に備えて資金確保に走る傾向が強まっており、足下の短期金融市場は流動性不足が顕在化している。思い起こされるのは、金融危機下の1997年11月、日本の短期金融市場で前代未聞のデフォルトが発生したことだ。
「中国で金融危機が起きる」と断言するつもりはないが、不動産危機に次いで金融危機が起こるのは過去の歴史が教えるところだ。
中国社会を大混乱させる金融危機が生じないことを祈るばかりだ。
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