クマは東京にも現れるのに、なぜ千葉にはいない? 全国の分布を専門家に聞いてみた 「四国のツキノワグマは絶滅の危機」
今年もクマが大暴れしている。10月末時点で全国の人身被害の数は過去最高の180人、死者も5人にのぼる。東京でも100件以上の出没情報があり、首都だからといって安心してはいられない。ところが、お隣の千葉県にはクマが1頭もいないのをご存じだろうか。
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NGOの「日本クマネットワーク」がホームページに掲載している情報によると、千葉県ではこれまで被害も出没情報もない。房総半島の南部には山が連なり食料となるドングリの林(照葉樹林)も多いのに、クマの空白地帯なのはどうしてなのか。
なぜ千葉にクマがいない?
同ネットワーク代表の佐藤喜和氏(酪農学園大学教授)が言う。
「千葉県にクマがいないのは、人による駆除などが原因ではありません。化石も発見されておらず、人類の歴史よりももっと以前から生息していなかったと見られています。その昔、関東平野は湿地や広い草原のような植生でした。秩父や多摩の山林で生活していたクマにとって、山を下りて、山とは採れる食物が違う関東平野にわざわざ進出し、そこから房総半島にまで足を延ばす意義がなかったのだと思われます」
そういうわけで千葉県は本州で唯一、クマのことを心配せずにハイキングができる場所なのだが、実は本州以外ならクマがいない地域は結構ある。たとえば九州は20世紀中ごろまでクマがいたが、山間地への人間の進出で今では絶滅したといわれている。
「また、四国では香川県もクマがいないことで知られています。県の南側には比較的大きな山地があり、生息条件がそろっていますが、吉野川から北側はこれまで出没情報がありません。また、愛媛県もほとんどいません」(同)
むしろ、四国においてクマは希少なのだという。
四国のツキノワグマは絶滅の危機
日本自然保護協会などが運営する「四国ツキノワグマ保護プログラム」によると、かつてクマは四国の広い範囲にいたが、駆除などによって激減。2010年から20年にかけて行われた調査で、徳島県から高知県にまたがるエリアに、わずか16~24頭が生息していることが分っている。だから、
「四国のツキノワグマは絶滅の危機に瀕している個体群として環境省のレッドリストに登録されています」(環境省四国事務所)