「お金を返せばいいというものではない」 旧統一教会、解散命令請求で感じた文化庁職員の本気度
統一教会の組織性は「社会通念に則って」
口頭での説明も、単なる資料の読み上げにとどまらなかった。資料の内容を口頭で補足しながら約40分、職員が代わる代わる説明した。
中でも興味深かったのは、統一教会の組織的不法行為に関する説明だ。お役所的な形式論ではなく、実態論に基づいていることがよくわかる。職員曰く、
「統一教会は、民事裁判で教団の代表役員や教団幹部や役所勤 が不法行為等を指示命令したと認定されたものがないことを理由に、宗教法人の行為とは言えないと主張している。しかしそれでは、本来、宗教法人法が解散命令制度を設けている趣旨が発揮されるのか。オウム真理教の解散命令請求に関する東京地方裁判所の決定は、『個々の行為と宗教法人の意思との関係に社会通念上、密接な関係があると認める場合は、宗教法人の行為と言える』としている」
報道陣から統一教会の不法行為の指揮命令系統を示す物証について尋ねられると、職員からはこんな言葉も。
「具体的な指示があるとすれば非常にわかりやすい話だと思います。ただ、そういうものを残すような団体ではないということはおわかりいただけると思います」
文化庁は今回の請求にあたって、170人を超える被害者等にヒアリングを行ったとしている。その成果なのか、あるいは質問権行使を通じて得た肌感覚なのか、統一教会への不信感のようなものまでにじみ出ていた。
「お金を返せばいいというものではない」
報道陣との質疑応答は、ジャニーズ事務所の会見とは違い「1社1問」などとは言わない。「2点伺います」「3点お聞きします」「もう1点」と質問する記者たちに、職員たちが配布資料以上の内容で丁寧に回答した。
記者:金銭的被害以外にも精神的な被害を与えているとのことだが、宗教2世の方の被害の大きさも考慮したものということか。
職員:ご指摘のとおり、下手な言葉を使えば「(お金を)返せばいいんだろう」というような話ではない。一度寄付した金額を弁護士を立てて取り戻すのは、ものすごく大変でエネルギーが必要なことです。個人の生活上の不安や脆弱さにつけ込み利用されて、まさに心の平穏や精神的安定が損なわれたということ。これは一つ一つ被害者からお話を聞かせていただく中で把握したことです。(このことから)子供たちにも経済的なものだけではなく精神的な被害も含めて起きているのがわかると考えております」
お金を返せばいいというものではない。経済的被害だけではない。統一教会側の「ほとんどの(経金請求の)ケースは和解で解決している」(10月16日の記者会見での岡村信男法務局長の発言)という言い分を一蹴する、文化庁の問題意識の表明だった。
ブリーフィングを約2時間と書いたが、実際はそれ以上だった。私は次の所用のためブリーフィング開始から2時間ほどで中座した。その後も文化庁職員と報道陣との質疑応答は続いていた。
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