【日本代表】ミャンマーに大勝しても、改めて浮き彫りになる「海外組が抱える大問題」

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ファイヒテンバイナー監督の言葉

 森保監督もミャンマーの試合への入り方に対し、「もしかしたら点を取るのが難しいかなと思っていたのにこじ開けた。先制点が取れずに時間が過ぎると難しい展開になるのに、選手はアグレッシブにプレーしてくれた結果」と評価した。

 ただし、ファイヒテンバイナー監督の「負けたにもかかわらず非常にハッピーだ。日本に勝てるとは思わなかった。日本のようなトップチームと対戦して、チームはベストを尽くすことができた。ベストを尽くして戦い続けたので、選手を誇りに思う」という言葉も付け加えておきたい。

 このミャンマー戦の勝利は当然として、翌17日にU-17W杯で日本はアフリカ王者のセネガルに2-0で勝ってベスト16に進出。さらに18日は親善試合とはいえ、過去に五輪連覇を達成しカタールW杯に出場したFWティアゴ・アルマダを擁するU-22アルゼンチンにも日本は5-2と圧勝した。

 日本の活躍が目立った先週末だったが、ミャンマー戦では課題もクローズアップされた。前述したように日本はケガ人や体調不良者が続出し、選手層の厚さを見せたものの“海外組”の招集の難しさを改めてクローズアップする結果となった(鎌田は腰痛のためミャンマー戦の前半だけで退き、その後はチームから離脱)。

分業制は可能なのか?

 選手は、招集されれば全試合に出たいと思うだろう。それがW杯での出場にもつながるのだからなおさらだ。その一方で、海外組は長距離移動による負担を強いられる。力の差が歴然としているアジア2次予選で、国内リーグだけでなくCL(欧州チャンピオンズリーグ)やEL(ヨーロッパリーグ)にも出場している選手をどこまで招集するか。

 欧州組は日本でのホーム戦よりもまだ移動距離の少ない中東での試合(今回のシリア戦)に招集し、ホーム戦は国内組を中心にという意見は以前から根強かった。しかし、森保監督にすれば「万が一」のことを考えざるを得ないため、2試合を1セットにして今回のようにターンオーバーを採用しつつ、温存したとはいえ遠藤や伊東、久保らを招集したくなるのも頷ける。

 森保監督自身はミャンマー戦のスタメンについて「一言で言うならベストの布陣です。コンディション等を踏まえて考えた結果、練習を踏まえて選んだ結果です」と説明したが、口が裂けても「主力は温存しました」などとは言えないだけに、そうとしか言いようがないだろう。勝因についても、「当り前のことを当り前に徹底してくれた」と選手を労った。

 日本のみならずオーストラリアや韓国なども大勝したW杯予選の初戦。シード国にとって2次予選が必要かどいうかという議論もあっていいだろう。しかし、ミャンマーのファイヒテンバイナー監督のように――あるいは、かつての日本のように――、アジアのトップレベルに立つ日本と対戦することでレベルアップを図ろうとしている国々があるのも現実である。

 現状ではターンオーバー制を採用しつつ、海外組と国内組の2チームによる分業制が可能かどうかを模索するしか解決方法はないだろう。「プレーヤーズ・ファースト」を考えると、なんとも悩ましい問題である。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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