「慰安婦モニュメントの“巨匠”に性加害の過去」 韓国で反日が下火の理由とは? 一方、再び「反日政権」が誕生する可能性も

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大統領夫人にまつわる疑惑

 尹大統領が国民の支持を得られない理由としてよく挙げられるのが、コミュニケーション不足だ。かつて朴槿恵(パククネ)元大統領が深刻なコミュニケーション不足から「不通大統領」と呼ばれたが、そんな朴氏の姿に尹大統領を重ねる向きも多い。

 確かに尹大統領は就任当初、「国民の声を聞く」と言い、毎朝、執務室のロビーでメディアのぶら下がり会見にも応じていた。だが、度重なる失言や左派系メディアの揚げ足取りに嫌気がさしたか、ぶら下がりはたった半年で中止。昨年8月に就任100日の会見を開いて以降、1年以上も公式会見を行っていない。

 尹政権の頭痛の種はこの他にもある。彼の妻、すなわち大統領夫人である金建希(キムゴンヒ)氏やその親族にまつわる疑惑もその一つだ。

 金氏の実母は不動産売買の際に通帳残高を偽造したとして、今年7月に懲役1年を宣告され、そのまま法廷で拘束されてしまった。不動産開発業を営む実兄も、マンションの開発事業に絡む私文書偽造罪などで在宅起訴。さらに、金氏一族が所有する土地の地価を引き上げるため、建設予定の高速道路のルートを政府が変更したという疑惑まで報じられている。夫人本人も、大学での論文盗作や株価操作などの疑いが持たれており、政権が今後、金氏の疑惑に対する左派からの苛烈な集中砲火に耐えられるかは未知数だ。

裁判を先延ばしにする作戦

 もっとも、「共に民主党」の李代表も汚職など計九つの罪で検察に起訴されており、本来なら大統領夫人の疑惑を非難する資格はないはずである。だが、驚くことに李代表は、国会の日程や健康上の問題、さらにはハンストを理由に裁判を先延ばしにし続けている。この作戦が功を奏し、李氏に対して来年4月の総選挙前に判決が下されることはないとみられている。

 改善の兆しを見せた日韓関係は、さらに良好なものとなるか。はたまた再び長い厳冬期に突入するのか。両国の関係は、未だに“一寸先は闇”なのだ。

金 敬哲(キム・キョンチョル)
ジャーナリスト。韓国ソウル生まれ。韓国の大学を卒業後、上智大学文学部新聞学科修士課程修了。東京新聞ソウル支局の記者などを経て、現在はフリージャーナリストとして活動する。著書に『韓国 行き過ぎた資本主義』や『韓国 超ネット社会の闇』など。

週刊新潮 2023年11月16日号掲載

特別読物「空前の『日本ブーム』 韓国で『反日』逆戻りへの吉凶」」より

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