「慰安婦モニュメントの“巨匠”に性加害の過去」 韓国で反日が下火の理由とは? 一方、再び「反日政権」が誕生する可能性も
数年前には反日不買運動が
だが、こうした大衆文化も当然のように受け入れられてきたわけではない。例えば、韓国の劇場版アニメの興行成績では、今年公開された新海誠監督の「すずめの戸締まり」が550万人超の観客動員数で、歴代4位を記録している。ところが、同じ新海作品でも、19年10月に公開された「天気の子」は76万人と振るわなかった。
原因はその年の7月に韓国で始まった「NOジャパン」運動だ。安倍晋三政権による韓国の「ホワイト国除外」を発端として、韓国ではあらゆる業界で反日不買運動がエスカレート。エンタメ業界も例外ではなく、テレビ局は作品のCM放送を拒絶し、「偏見を持たないで」という配給会社の声明が虚しく響くばかりだった。ネット社会の韓国では、作品を観たことをSNSでシェアするのも映画の楽しみの重要な一部。だが、「NOジャパン」の渦中にそのような投稿をすれば袋だたきに遭うのは明らかで、必然的に日本のエンタメは忌避されてしまう。
日本で大ヒットした「鬼滅の刃」も韓国では「主人公の耳飾りが旭日旗の模様」などと物言いがつき、デザインが変更される事態となった。ひとたび「反日」の風が吹き始めると、誰にも止められない。それが韓国の反日世論の恐ろしさなのだ。
処理水問題では反日が広がらず
今年8月には、福島原発の処理水放出により、再び「反日」が頭をもたげるかという局面もあった。
国会内では、文大統領時代の政権与党であった「共に民主党」が、日本の処理水放出を猛烈に非難。尹政権も放出に事実上賛成したとし、大々的に反対運動を展開した。尹大統領と大統領選を争った「共に民主党」の李在明(イジェミョン)代表は国会前でハンストまで強行。だが、彼らのデモや集会が大きな話題になることはなく、たった数回の開催で幕を下ろしてしまう。これまで同様、「反日」の炎が簡単に燃え広がると考えていた「共に民主党」のもくろみはもろくも崩れ去ったのだ。
処理水放出によって打撃を受けるとみられていた韓国の水産業は、かえって売り上げが上昇するという皮肉な結果も生んだ。日本では処理水放出に対する韓国メディアの偏向報道や街頭の反日デモが報じられたこともあったが、大きな影響を及ぼすことはなかったのだ。
実際、秋の長期連休の最終日となった10月3日、ソウル最大の水産物市場である鷺梁津水産市場は多くの観光客でにぎわっていた。市場のいたるところに「韓国の水産物は安全」という垂れ幕が掲げられ、売り場通路に設置された大型電光掲示板には、日ごとに更新される放射能検査の結果が映し出されていた。
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