日本の農畜水産物は「第二の自動車産業」になる――安田隆夫(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス創業会長兼最高顧問)【佐藤優の頂上対決】
販売側からの視点
安田 いま日本の農畜水産物を一番海外で売っているのは、私どもではないかと思います。日本の食文化はもっと広がる可能性がある。和食のレストランもやり方を工夫すればさらに増えると思いますし、食材も同じです。日本の食品は、「第二の自動車産業」になりますよ。
佐藤 国内市場は人口減で縮小する一方ですから、海外で売ることは非常に重要です。すでに農水省も輸出に力を入れています。
安田 このため私どもは2020年に、日本の農畜水産物を輸出するための会員制組織「PPIC(パン・パシフィック・インターナショナル・クラブ)」を作りました。これまで輸出に関し、生産者や行政からのアプローチはあっても、イグジット(販売)側からのアプローチはなかった。実際に売る側から見ると、どこがボトルネックなのか、違った部分が見えてくる。それを一緒に解決していくグループを作ったのです。
佐藤 川下から全体を見て、川上にアプローチしていくわけですね。
安田 ええ、アマゾン川の逆流になぞらえて、社内ではこの取り組みを「ポロロッカ」と呼んでいます。
佐藤 行政とも連携している。
安田 生産者だけでなく、県や市なども入っています。特に入会金や会費が必要なわけではありません。愛媛県や鹿児島県から始まって、いまは500以上の生産者さまや団体さまが参加してくださっていますね。
佐藤 農畜水産物は空輸しているのですか。
安田 いえ、船便が半分以上です。船便で鮮度を保ったまま送ることが一つのボトルネックになっていました。これは冷凍、冷蔵のコンテナを使ったり、鮮度維持のため特殊なコンテナを使用したりするなどして解決しています。
佐藤 中国が原発事故の処理水問題で日本の水産物の輸入を禁止しましたが、影響は出ていますか。
安田 中国は香港・マカオだけですが、海外全体では大きな影響はありません。まあ、海外で事業をしていると、こうした思わぬ事態も生じます。その度に一喜一憂していてもしょうがない。
佐藤 最終的には経済合理性が勝ちます。
安田 その通りです。世界的に日本の農畜水産物の需要があるのは間違いない。そこに私たちが先鞭をつけていきますから、どんどん後を追ってきてほしいですね。
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