日韓友好で支持率アップ? 岸田首相が気付いていない、空中分解する「尹錫悦政権」の現在

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「日韓友好」で支持率アップ?

――尹錫悦政権の弱体化に岸田氏は気付かないのでしょうか。

鈴置:全く気付いていないと思います。11月17日、岸田首相は尹錫悦大統領と共に米スタンフォード大学で開かれた討論会に出席し、日韓共同で水素など脱炭素燃料の供給網を構築すると表明。さらに量子技術の分野で共同研究体制を作るとも発表しました。

 その際、岸田首相は「科学技術分野での連携は変化する日韓関係を象徴する領域になる」と述べました。まだ「良い方向に変化する」と信じているのです。日本経済新聞の「岸田首相 米大討論会での冒頭発言全文と主なやりとり」(11月18日)で読めます。

 岸田政権のもう1つ救い難いところは「日韓友好」を演出すれば、支持率が上がると思い込んでいることです。11月11日、日経は討論会に先駆け、朝刊1面トップでこの先端技術協力を報じました。政権は「韓国との協力を進める」と宣伝すれば国民から好感を持って迎えられると計算し、日経にリークしたのでしょう。

 しかし、ネット上には「日本が勝負どころとして選び、研究を進めてきた量子技術を韓国に渡すのか」といった反発が目立ちます。尹錫悦政権が空中分解する前から、多くの日本人が「韓国は信用できない国」と見切っているのです。

 減税を掲げて支持率を落としたのと同根の失敗です。岸田政権を仕切っている人たちは、よほど政治的なセンスに乏しいのでしょう。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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