ヤクザ映画ファン垂涎の「北陸代理戦争」がニュープリントで甦るまで…旧作邦画を自腹で守る名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」支配人が語る

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映画文化を支えるミニシアターの心意気

 ニュープリントの製作費は、ネガの状態や尺(上映時間)にもよるが、1本30万円前後といわれてきた。それも昨今の資材費高騰で、さらに高額になりつつあるようだ。

「時折、映画ファンが作成費を出してニュープリントをつくる場合もあります。当館でも、“中村(萬屋)錦之助映画ファンの会”と共同で焼きなおした作品があります。今回の特集で12月に上映される『冷飯とおさんとちゃん』(田坂具隆監督、1965年/東映)や、『関の彌太っぺ』(山下耕作監督、1963年/東映)などがそうです」(ラピュタ石井支配人)

 しかし、考えてみれば、映画フィルムは、映画会社(製作会社)の所有物である。それを借りる側の映画館が費用を出して修復(ニュープリント)するとは……まるで賃貸アパートの雨漏りを、大家ではなく入居者の負担で修繕するような話で、少々変ではないだろうか。

「たしかに、そう感じるのも無理ありません。でも旧作邦画のフィルムは、焼きなおしたとしても、すぐにそう何回も使用されるものではありません。すべてを映画会社が負担して焼いていては、元手が回収できないと思います。かつては巨匠・名匠の生誕100年や各社の周年事業など記念の映画祭でニュープリントされることもありましたが、もう需要がありませんからね。仕方ないです……やはり、私たち名画座が担っていくしかないと思っています」

 映画文化は、繁華街のシネコンのみが守っているわけではない。底辺で、街中のミニシアターが支えているのである。
(一部敬称略)

富樫鉄火(とがし・てっか)
昭和の香り漂う音楽ライター。吹奏楽、クラシックなどのほか、本、舞台、映画などエンタメ全般を執筆。東京佼成ウインドオーケストラ、シエナ・ウインド・オーケストラなどの解説も手がける。

デイリー新潮編集部

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