「Please sit down」はNG 「外国人観光客」を“悪者”にしないために必要な最低限の「説明」と「英語力」とは
外国人はその常識を知らない
東南アジアでもさすがにホテルやショッピングセンターでは洋式の便器が多いが、安い飲食店などでは、しゃがむ形式の便所が今でも立派な現役なのである。写真はタイ・バンコクのものである。和式を知っていたとしてもいわゆる「金隠し」がないため、どちらが正面か分からない人もいるかもしれない。そして、これが最大の特徴なのだが、紙がないことも多いのだ。さらに、紙があっても便器に流さないのが暗黙の了解。用を足したら桶に入った水で該当箇所を洗い、紙の用途はせいぜいその水分を拭くことに限られ、その紙はゴミ箱に捨てる。ちなみに、ホテルでもいわゆるウォシュレット的なものは手動式のジェットシャワーで、コレを使って洗い流し、同様に紙で水を拭き取ってゴミ箱に捨てる。
他にも、アメリカでチップの習慣を知らなかったり、知っていても適切なパーセンテージを知らない場合は店員から呆れられることだろう。それと同じで「外国人はその常識を知らない可能性がある」という意識を持つ必要がある。
それを痛感したのが、現在、私が拠点とする佐賀県唐津市のユネスコ無形文化遺産で、唐津神社の秋季例大祭に当たる「唐津くんち」での「ふるまい」に関してだ。元々「唐津っ子は年収の3分の1」を「ふるまい」に使い、大量の食事と飲み物を用意し、人々をもてなす。観光客も自由に他人の家に上がることができる――。そんな通説が知られていた。だが、実際にこの街に住んでみるとよく分かるのだが、これは違う。実際はこうである。
6人の外国人が
「唐津くんちの期間は、知り合いの家に知り合いを連れて行っても構わない。ただし、酒やお菓子等の手土産は持っていくのが礼儀だし、事前にそちらの家へ行っても良いかの確認はしておいた方がいい。長居は無粋で少し混んできたらサッと席を立ち外へ出る」
私は唐津に住んだ初年度にこうした前提を「町」の重鎮から聞いていたため、知人が県外から来た時も同じことを伝えるようにしている。しかし、外国人にはやはりこの微妙な「匙加減」的なものが伝わり辛かったようだ。
昨年の唐津くんちの際、A氏はとある飲食店を一部貸し切りにして知り合いを招き、「会費1000円+飲み物は各自持ち込み」ということで曳山がよく見える場を準備した。食べ物は同氏が準備し、自腹を切ったうえで、一人1000円の参加費を店に支払うようにしたのだ。もちろん店に注文をすることも構わない。そして、一般の客も入れるようにした。
午前中と午後の早い頃、人がそれほど多くない時は特に混乱はなく、A氏の関係者と一般客がうまいこと共存できていた。しかし、午後が深まり、街中が酔っ払いモードに入ってくると、誰が声をかけたのかが分からない6人の外国人が入ってきた。「この店を紹介された」と彼らは言う。すると、彼らはクーラーボックスに入っていた誰かが持参した缶ビールや缶チューハイを勝手に取り、さらにはA氏が準備していた食べ物と、店が追加注文で作った食べ物を猛烈な勢いで食べ始めたのだ。
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