めぼしい“戦力外選手”は参加しない現実…「合同トライアウト」は本当に必要か?

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昨年、NPB球団と契約できた選手は3人だけ

 ストーブリーグに突入したプロ野球。フリー・エージェント(FA)権の行使や、メジャー挑戦などに注目が集まる一方で、自由契約、いわゆる“戦力外”を通告された選手の動向も気になる。プロ野球人生の岐路に立たされた選手にとって、最後のアピールの場となるのが「12球団合同トライアウト」だ。今年は11月15日に、日本ハムの二軍本拠地、鎌ヶ谷スタジアムで行われ、既にNPB以外でプレーしている選手を含めて59人が参加した。【西尾典文/野球ライター】

 このなかには、かつて新人王に輝いた高山俊(前・阪神)や、最多勝率のタイトルを獲得した薮田和樹(前・広島)、高卒3年目の西川僚祐(前・ロッテ)らが含まれており、球団関係者やファンから熱い視線を浴びていた。

 しかし、過去の結果を振り返ってみると、12球団合同トライアウトから再び契約を勝ち取ることは極めて困難だ。昨年は33人が参加したが、NPB球団と契約できた選手は、三ツ俣大樹(中日→ヤクルト)、西巻賢二(楽天→ロッテ→DeNA)、上野響平(日本ハム→オリックス)の3人のみ。支配下契約に限ると、三ツ俣しかいなかった(西巻はシーズン中に支配下登録)。

「プロの球団は、アマチュア選手を担当するスカウトとは別に、我々のような他球団の選手を調査する担当が必ずいます。その担当者は、1年中ファームの試合をチェックしており、気になった選手がいれば、当然、リストアップをしています。(自由契約になった選手の中に)めぼしい選手は、トライアウトの前に獲得を提言しています。去年も1人良いと思っていたピッチャーがいて、私も推薦しました。残念ながら、枠の問題で獲得に至りませんでしたが、他球団に入団できました。良いと思った選手は、どの球団も動きますから、トライアウトまで話がなかったということは、かなり厳しい立場になっています」(セリーグ球団の編成担当者)

 この編成担当者が語るように、森唯斗(前・ソフトバンク)や中島宏之(前・巨人)らは合同トライアウトに参加していないが、既に獲得に動いていた球団があるとの報道が出ている(11月16日時点)。

独立リーグや社会人野球に活躍の場を移す選手も

 例外があるとすれば、首脳陣のプッシュがある時だというが、一昨年、日本ハムの新庄剛志監督がトライアウトを視察して、評価するコメントを出した選手がいたものの、球団は結局、獲得しなかった。以前、筆者も合同トライアウトの現場を取材したことがある。良いプレーが出ても、視察する球団関係者からは、芳しい反応が見られることはほとんどなかった。

 それならば、合同トライアウトを開いても“意味”がないのではないか……。そう考える野球ファンは少なくないが、決してそんなことはない。

 なぜなら、NPB球団以外も戦力外となった選手に注目しているからだ。近年は、独立リーグや社会人野球に活躍の場を移す選手が目立っている。たとえば、加盟球団が最も多いBCリーグ。今年、福島レッドホープスでプレーした佐藤優悟(元・オリックス)は、打率.388、93安打で、首位打者と最多安打のタイトルを獲得した。オリックス時代は、育成選手として2年間プレー。二軍でも結果を残していないが、当時に比べて、明らかに打撃が向上している。

 一方、ソフトバンクのブルペンを支える藤井皓哉は、2020年オフに広島を戦力外となり、四国アイランドリーグの高知に移籍。その後、眠れる才能が開花し、翌年12月にNPBへの復帰を果たした。

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