今年メキシコから米国への密入国で逮捕された中国人は前年比13倍…中国政府に愛想を尽かした国民がやっていること

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上海のハロウィンが示した「若者たちの不満」

 北京の名門大学では、スパイ発見に関する宣伝活動が強化され、発見時に通報する方法の短期集中講座なども行われる可能性があるというが(9月14日付ブルームバーグ)、民意に鈍感な中国政府への忠誠心が低下していたとしても、なんらおかしいことではないだろう。

 にもかかわらず、中国政府は国民の心情を逆なでする行為を続けている感が強い。

 習近平国家主席は10月30日、新たに選出された女性団体指導者たちを北京市に招いて、若者の結婚と出産に関する考え方を変え、人口を増やして高齢化に積極的に対応するよう指示した。

 昨年から人口減少に転じたことへの危機感の表れだろうが、これほど民意を無視したものはない。若者たちが結婚などに消極的なのは、もっぱら経済的な事情によるものだ。

 国民からの批判を恐れ、中国政府は「フォロワー50万人以上なら実名の表示が必要」とのインフルエンサーに対する規制も導入し始めており、若者の不満は高まる一方だ。「百害あって一利なし」だと言わざるを得ない。

 上海で行われたハロウィンが、11月に入っても注目されている。コロナ前までの参加者は日本のようにほぼコスプレだったが、今年は白い防護服を着た「大白(ゼロコロナ政策下で市民を監視していた集団)」など、政治や社会問題に関する“仮装”が目立っていたという。(11月11日付ダイヤモンドオンライン)

一般の中国人が海外脱出する動きにも勢い

 国民全体の政府に対する不満も高まる一方のようだ。

 米世論調査企業「モーニング・コンサルタント」が11月8日に発表した調査結果によれば、中国における成人の満足度は過去最低の水準だった。ゼロコロナ政策への不満から中国政府への抗議活動が生じた昨年後半よりも低下している。

「社会に不安が満ち、労働者は疲弊している」と痛感している国民は、経済発展(生活の安定)よりも国防にばかり熱心な中国政府に愛想を尽かし始めており、一般の中国人が海外脱出する動きも勢いを増している。

 仏国際放送局RFIは11月1日、「今年1~9月にメキシコから米国に密入国しようとして逮捕された中国人は前年比13倍の約2万2000人に達した」と報じた。

「民信無くんば立たず」(論語)。国民の信頼を回復する努力を怠っていると、中国政府は未曾有の危機に直面してしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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