「大麻グミ」で相次ぐ救急搬送…「元マトリ部長」が明かす“食用大麻”のリスク「効果がピークに達するまでの時間が全く違う」

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改正法案には“使用罪”も

 東京都小金井市で11月4日に開かれた「武蔵野はらっぱ祭り」の来場者6人(1人は未成年)が、吐き気などの体調不良を訴えて病院に搬送されていたことが判明した。いずれもの来場者もイベント会場で40代男性が配っていた“グミ”を口にしており、警視庁はそこに大麻由来の成分が含まれていた可能性があるとみて鑑定を進めている。また、今月3日には墨田区の押上駅でも20代の男女4人が病院に運ばれ、そのうちの1人は「大麻グミを食べた」と供述しているという。

「現在、大麻を巡っては3つの大きな課題が存在します。まず、大型の不正栽培事案が頻発していること。次に、“合法大麻”を標榜する危険ドラッグが急増していること。そして、大麻ワックスや大麻リキッドなど、THC成分だけを抽出したケタ違いの効き目を持つ“濃縮大麻”が出現し、それらを混ぜ込んだ食品が出回り始めていることです」

 そう語るのは、元厚生労働省麻薬取締部部長で、『マトリ 厚労省麻薬取締官』、『スマホで薬物を買う子どもたち』(共に新潮新書)などの著作がある瀬戸晴海氏である。

 実はいま、日本における“大麻”の扱いは大きな転換点を迎えつつある。11月14日には大麻取締法の改正案が衆院を通過。大麻草由来の成分を含む医薬品のうち、安全性と有効性が確認されたものは国内での使用を可能とする一方、大麻と、その有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を「麻薬」と位置付け、麻薬取締法の対象にして使用罪が適用できるようになる。THCは、摂取すると脳神経に影響を及ぼし、幻覚作用や酩酊作用をもたらすことで知られる。

味や香りで判別することは困難

 実に75年ぶりとなる大麻取締法改正を前にして、相次ぐ大麻食品によるトラブル――。瀬戸氏が懸念するのは、大麻を吸引する場合とは異なる大麻食品の危険性についてだ。ちなみに、「大麻入り食品」とはTHCを含む食品、あるいは、まだ規制対象となっていないTHCの類似物(危険ドラッグ)を含む食品を指す。

「欧米をはじめ合法化されている地域では、大麻クッキーや大麻グミ、大麻ブラウニーなどの大麻食品が広く流通しています。お菓子の場合は、細かく切り刻んだ大麻草の花穂の部分や、大麻リキッドを生地に練り込むことが多い。ただ、含有量や製造方法によっては大麻草特有の青臭い匂いはかなり軽減されます。そうなると、味や見た目、香りによって大麻が含まれているかを判別することはかなり困難です」(瀬戸氏)

 つまり、知らず知らずのうちに口にしてしまう恐れがあるというのだ。しかも、よりリスクが高いのは“子ども”に他ならない。今年10月にはジャマイカで大麻成分入りのお菓子を食べた小学生60人が病院へ搬送され、南アフリカでも大麻入りマフィンを口にした小学生90人が入院したと報じられている。

「海外では、ハロウィンやクリスマスのパーティーで友達の家を訪れ、誤って大麻成分の入ったお菓子を食べてしまうことはあり得る話です。また、友達から大麻の吸引を勧められても断る子どもが大半だと思いますが、大麻チョコや大麻クッキーだったらハードルは低くなる。とはいえ、食用大麻は子どもにとっては危険です。嗜好用大麻が合法化された米・ニューヨーク州でも、パンフレットやカードを大量に配布して、<大麻は、脳がまだ発達中の若者に深刻な影響を与える可能性があります。思考、学習、問題解決の困難などにマイナスの影響が生じる可能性があります。記憶力や集中力、そして協調性も低下します>と注意喚起しています。さらに、誤って摂取した場合には<ただちに救急医療(911)か中毒センター(Poison Control Center)に連絡>するよう呼び掛けているのです」(同)

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