【竜王戦】藤井聡太が3連覇 解説者に「1人だけずるいよね」と言わせた芸術的な詰将棋力

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渡辺九段が初の立会人

 第4局の立会人は、竜王11期をはじめ通算タイトル31期の歴代4位の記録を持つ渡辺明九段(39)だった。「最強」とされていた渡辺九段はこの3年間で、藤井に棋聖、王将、棋王、名人と四冠を奪われたが、今回は立会人としてその相手と対峙した。立会人はこのタイトル戦が初めてだという渡辺九段は、どんな心境だったのだろうか。

 その渡辺九段は、藤井が89手目に「4二歩成」と指し、伊藤が昼食休憩をはさんで148分(休憩時間は除外)の大長考に入った頃、ABEMAの中継に出演した。過去、自身のタイトル戦で加藤九段が立会人だった時、手順がよく分からなかったのか、「始めてください」という言葉を言ってくれず困ったというエピソードを明かした。今対局については、「ここは『8六歩』しかない。昨日までは伊藤さんが優勢とみていましたが、『6七銀』で五分か、少し藤井さんがよくなったのでは」などと解説した。

 さらに、渡辺九段のもとに小樽の地ビールなど飲料が並べられた盆が運ばれた。小樽ビールは前日に飲んだそうだが、「この日は仕事なので飲めない」と言って「うにラムネ」を試したが、「うまいサイダー」と言いながらも、「ウニの味がわからないなあ。成分にウニと書いてないから、入ってないのでは」と話した。さっと成分表示を見る目が鋭い。

 駒や駒台を選んだりする前日の検分では、「明日は今日と同じような気温(15度)ですが、2日目は最高気温が5度とかなり冷え込むことが予想されます」などと話し、藤井にもよく話しかけていた。努めて対局を明るい雰囲気にしようとしていた気遣いが見えた。

 さて、本局に戻る。93手目に藤井が「4九歩」と自陣の金の下に底歩を打つと、打ち込んでいた伊藤の飛車の威力は大きく減退する。伊藤がどうするかと見守ったが、「7六桂」と意外な王手を差した。進んで113手目。満を持した藤井は「7二金」と王手をかけた。実はここで詰みだった。とはいえ37手もかかる。伊藤玉は逃げて粘ったが、129手目の「6一飛」の王手を見て投了した。まだ午後5時31分だった。

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