90年代に大ブーム「ブルセラショップ」は下火も…女子高生の「制服」を“中国人女性”が買い求める意外な理由

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高価な制服を買えなくなった日本人

 2018年、銀座にある公立小学校が、ハイブランドが監修した標準服を採用した際は、「高すぎる」として議論が巻き起こった。夏服や冬服など一式をそろえると、8万円前後に達するといわれる。しかし、1980年代後半から1990年代を振り返ると、森英恵のようなファッションデザイナーが手掛けた高級な制服が、私立はもとより、地方の公立高校でも採用されていた時代があったのである。

 それらは一式揃えると10万円前後になる例も珍しくなく、周囲の高校の制服よりも高価だった。しかし、バブル景気も追い風になり、デザイン性の高い制服が生徒を集める起爆剤として期待されたのである。そして、当時の保護者は子どものためにせっせと買い求めていたのだ。ところが、平成不況に本格的に突入した2000年以降は、相次いでそうしたデザインの制服が廃止され、平凡なブレザーにモデルチェンジされていく。

 近年では、制服代を安く抑えようという動きがみられる。埼玉県の公立高校がユニクロの既製品のジャケットやスラックスを制服として導入したように、家計に配慮した低廉な制服を採用する動きもある。お下がりのニーズも高まっているし、一部の高校では制服を廃止しようという動きも起きているという。失われた30年の間に、日本人が制服に求める価値観は大きく様変わりしたと言っていい。

「現在、制服コレクターの間では、90年代に採用されたデザイナーズブランドの制服が再評価され、人気があります。平凡な制服が増えたため、個性的な制服は目立ちますからね。もしくは、1980年代のモデルチェンジブームの際にデザインを変更せず、頑なに伝統を守り通している伝統校のセーラー服なども普遍的な人気がありますね」と、A氏が言う。

日本人が制服を買えなくなった一方で…

 セーラー服のスカーフやブレザーのリボンなど、制服を構成するパーツも学校によっては高額で取引される。女子高生B氏は、在学する高校の指定品を買い求めては、フリマサイトで売りさばいて小遣い稼ぎを行う。彼女が扱うのは何の変哲もないスカーフなのだが、これが高値で売れるのだという。

「このスカーフは市販品と違って、うちの学校でしか使われてないシルク製の特別なものだから、欲しい人がいるんです。学校の購買で2000円で買ったスカーフが1万円で売れるから、いいお小遣いになりますよ。学校にバレないかって? 実はバレているんですよ(笑)。でも、私は成績もいいので、言いたくても言えないのかもしれないし、第一、違法でも何でもないから(笑)」

 そう笑うB氏はしたたかで、なかなかの商売上手であるように感じた。そして、彼女のお得意先も中国人だ。スカーフを定期的に、5点、10点と買い求める“顧客”がいるという。おそらく、中国国内で転売するなどして、荒稼ぎするのだろうか。B氏は、日本人よりも中国人とやり取りする方が遥かに楽だと話す。

「日本人はまず値切ってくる。着画(制服を着た画像)を売ってくれとか、自撮りの写真をくれ、LINEを教えてくれ、オプションで下着をくれ、会ってくれ……と、とにかく要求が多くてウザい。一緒に食事に行こうとオッサンに誘われたことがあるけれど、誰がおまえなんかと行くか(笑)! でも、中国人はこっちの言い値で買ってくれるし、変な要求がないからマナーがいい。ビジネスライクな付き合いができるからいいんですよね(笑)」

 B氏はこうして稼いだ金を、大学進学のために積み立てていると話す。そして、卒業後には自身の制服一式をそっくりそのまま、中国人のコレクターに売却する予定だ。日本人が高価な制服を買えなくなった一方で、中国人が10万、20万円で制服を買い漁り、コスプレやコレクションとして楽しむ。そして、そうした中国人相手にビジネスをする女子高校生。改めて、日本の貧困化や格差を感じずにはいられない。

ライター・元城 健

デイリー新潮編集部

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