「アルコール」と「肝臓」の新常識 「良いお酒飲み」になる「減酒」術
なぜお酒に強くなる?
さらに、アルコールは体内に取り込んだ脂肪をエネルギー化するβ酸化というプロセスや、細胞内への脂肪の取り込みもブロックします。その結果、血中に中性脂肪を増加させてしまう性質がある。ごく簡単に言えば、アルコールは脂肪をうまく処理する作業を阻害してしまうのです。
つまり、アルコールはそれ自体が高カロリーであるばかりか、食事から摂取した脂肪を体内にため込むように働くため、二重の意味で脂肪肝や肥満を促進するといえるわけです。特に、「高アルコール度数=高カロリー」なのに安価で飲み過ぎてしまいがちな、いわゆる「ストロング系」のお酒は要注意です。
次に、主にND型の人に向けた話をしたいと思います。アルコールを処理する酵素のひとつである「MEOS」は、アルコール量が増えると活性化する性質を持っています。そのため、ND型であまり飲めなかった人が、飲んでいくにつれ「お酒に強くなる」ということが起きるわけですが、1週間アルコールを摂取しなければ、活性化したMEOSの効果は消えてしまいます。
ですから、もともと飲まなくても平気だったのに、飲み会などでお酒に付き合っているうちに次第に飲めるようになり、毎日飲む習慣がついてしまったというようなND型の人は、1週間ノンアルコールのビールなどで通してみるといいでしょう。元の「お酒に弱い」状態に戻り、飲酒量を抑えられるはずです。1週間ぶりに飲むアルコールはかなりガツンときて、缶ビール1本で十分に満足感を味わえると思います。
ノンアルコール飲料には人工甘味料が使われているケースが少なくありませんが、飲食に関する健康のベネフィットとリスクは全て相対的なものです。人工甘味料を一切取らないことを考えてノンアルコールを忌避し、結局アルコール量が増えてしまう健康リスクと、人工甘味料を多少取ってもアルコール摂取量を減らすベネフィットを考えた場合、私は後者を選択すべきだと考えます。
ノンアルの始め方
NN型で大酒飲みの人にも、ノンアルコール飲料はお勧めです。とはいえ、お酒好きな人ほどノンアルコールはまずいし、酔えないし、飲めたものではないと考える傾向が強いようです。
そういう人は、例えば最初は本当のビールを飲み、2、3杯目からノンアルコールビールにしてみる手があるでしょう。いきなりノンアルコールよりも抵抗感が少なく、ほどよく気持ち良くもなれるので慣れていきやすいと思います。
さらには、休肝日を設けることも、もちろん肝臓をいたわる行動です。私のお勧めは、サウナ後にビールではなくノンアルコールビールを飲む習慣です。せっかくサウナで整えたのですから、その日くらいは体に悪いことはしないと決める。
また、利尿作用があるアルコールは、水分を体外に排出する働きをします。ビールを1リットル飲んだ場合、1.1リットルの水分が体外に出ていきます。ですから、サウナで汗をかいた後のビールは脱水症状のリスクを高めてしまう。この点からも、「サウナの日は休肝日」がいいのではないでしょうか。
そんな助言は要らない、アルコールのない生活ほどつまらないものはないし、浴びるように飲んでこそ人生の醍醐味は味わえるのだ――頑強にそう訴える人がいるとしたら、それはもはやアルコール依存症といえるかもしれません。事実、動物実験による中毒性の研究では、ニコチンやジアゼパム(抗不安薬)よりアルコールの依存性は高く、モルヒネやアンフェタミン(覚醒剤)とさほど変わらないとの結果がでています。アルコールは「ドラッグ」の一種ともいえるのです。
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