「アルコール」と「肝臓」の新常識 「良いお酒飲み」になる「減酒」術
三つの「飲酒型」
具体的な減酒法の話をする前に、まずは皆さんの「飲酒型」について説明しておきたいと思います。
顔が赤くならずに飲んでいられる人(1)、赤くはなるけれどアルコールを受け付けないわけではなくそこそこいける人(2)、全く飲めない、いわゆる下戸(3)。飲酒に関してはこの3タイプに分けられます。そして、アルコールの処理能力は遺伝子によって決まっていて、(1)を「NN型」、(2)を「ND型」、(3)を「DD型」と呼びます。日本人の56%がNN型、40%がND型、4%がDD型との臨床研究があり、ちなみに私はND型です。
さて、過剰なアルコール摂取によって引き起こされる肝臓の障害を文字通り「アルコール性肝障害」と総称しますが、日本アルコール医学生物学研究会は、純アルコール(純エタノール)を1日60グラム以上摂取することによる肝障害をアルコール性肝障害と定義しています。このことから、「過剰な飲酒」の基準は1日60グラム以上のアルコール摂取ということができます。
大ダメージに強い特徴
また、男性よりも女性のほうが少ないアルコール摂取量で肝障害になる傾向があることが分かっていて、1日40グラム以上のアルコール摂取を5年以上続けると、女性はアルコール性肝障害になる危険性があります。こうしたことを踏まえて、まずはNN型の人は1日60グラム以下、ND型の人は1日40グラム以下のアルコール摂取量にとどめるという「減酒」をお勧めしています。
純アルコール量60グラムの目安は、ビールであればジョッキ3杯、日本酒は3合、ワインはグラス4~5杯、缶酎ハイ(350ミリリットル)の場合は3缶、焼酎はロックで3~4杯です。ジョッキのビールで考えると、4杯飲んでいた人が1杯減らすと純アルコール量は60グラムとなり、3杯飲んでいた人がやはり1杯減らすと40グラムに収まる計算になります。
大事なのは、この「減酒」を継続していくことです。そこには肝臓という臓器の、他の臓器にはない特性が関係しています。
重さ千~1800グラム。全臓器の中で最重量の臓器である肝臓は、食べものに含まれる栄養素を体の細胞にとって使いやすくする代謝や、体に有害な物質を体外へと排出する解毒などの役割を果たし、24時間365日休むことなく活動する働き者の臓器です。
そしてボクサーに例えると、顎を打ち砕く強烈な一発ストレートに強いという特徴があります。例えば、心臓であれば激しい衝撃を受けると心筋梗塞となり、一発でノックアウト状態です。それに対して肝臓は、体積で7割に相当する部分を切り取ったとしても、3カ月後には体積も機能も元の状態に修復されます。それもツルツルピカピカの“新品”として復活する。それほど大ダメージに強いのです。また、かすったくらいのパンチ、例えば毎日缶ビール1本を飲む「弱程度」の連続攻撃にも肝臓はビクともしません。
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