「アルコール」と「肝臓」の新常識 「良いお酒飲み」になる「減酒」術

ドクター新潮 ライフ

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肝硬変の成因、1位がアルコールに

〈こう解説するのは肝臓外科医の尾形哲医師だ。

 フランスのパリ大学付属ボジョン病院の肝臓移植外科に臨床留学するなど、約20年にわたり肝臓治療の現場に立ってきた尾形医師。現在は佐久市立国保浅間総合病院(長野県)の外科部長(肝胆膵外科)として、全国でも珍しい肥満・脂肪肝専門の「スマート外来」で診療を行う「肝臓病学」のスペシャリストだ。

 お酒とどう付き合うかは、左党の永遠の課題といえよう。また、お酒が大好きというほどではないものの全く飲めないわけではないという人にとっても、適切なアルコール摂取法は気になるところ。お酒も進みがちな食欲の秋に、専門家である尾形医師の話に耳を傾けてみることにしよう。〉

 実に日本人成人の3人に1人が脂肪肝であるとされ、それを放っておくと肝硬変や肝がんに至ってしまいます。日本肝臓学会が調査し、今年報告されたデータによると、肝硬変の成因は、これまでのC型肝炎(27.1%)を抑えて、アルコール(28.8%)が第1位になりました。お酒はまさに肝臓の天敵といえるわけです。

「生涯にわたってお酒を楽しむ方法」

 お酒好きの人は「酒は百薬の長」という古(いにしえ)からの言葉にすがりたい思いでしょう。しかし残念ながら、世界五大医学誌のひとつである「ランセット」に2018年に掲載された研究報告によって、「酒は百薬の長」は完全に否定されています。世界各国・各地のデータが記された約600の論文を集めて分析した結果、飲酒量ゼロであることが、最も健康阻害リスクを下げるということが示されたのです。

 従って健康を考えると、お酒を全く飲まないことが望ましいといえるわけですが、量は別として多くの人がお酒を嗜み、人生のアクセントとして楽しんでいる以上、飲酒量ゼロの「断酒」は現実的ではないでしょう。なお私自身も、缶ビール1本やワインをグラス1杯といった程度に、お酒を楽しむ機会があります。

 そこで私は、お酒との上手な付き合い方として、ひとまずアルコール摂取量を減らす「減酒」を提唱しています。それは同時に、「生涯にわたってお酒を楽しむ方法」でもあります。飲み過ぎて体を壊してしまっては、お酒を楽しむことをやめなければならなくなる。そうならないように、「一生飲み続けるための減酒」と発想を変えることで、左党の人も取り組みやすくなるはずです。

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