中日、肩を壊した“ドラ3”高卒ルーキーを「育成落ち」にして波紋呼ぶ…新人選手を守るためにやるべきことは何か
ほとんどの新人選手は同じ練習メニュー
一方で、パ・リーグ球団のスカウトは、「アマチュア選手を受け入れるプロ側にも問題がある」と指摘したうえで、こう続ける。
「スカウトと現場がうまくコミュニケーションが取れていない問題があります。新人選手については、スカウトから一通りどんな選手か説明して、メディカルチェックなどを行います。ですけど、入団してしまえば、あとは現場の指導者の“裁量次第”となります。新人選手がどのようなアマチュア時代を過ごしてきたのか、考慮されてないことも多いですね。ロッテの佐々木朗希のように、誰が見ても凄い人材で、故障リスクが高いとなれば、話は別でしょうけど、ほとんどの新人選手は同じメニューをこなします。本来であれば、1年目の合同自主トレや春季キャンプから、新人選手の個別の状態に合わせて、いろいろとメニューを変えるべきだと思いますよ。『プロ選手は個人事業主だから自己責任だ』とは言っても、球団が高い契約金を払って、獲得しているわけですから、ある程度、一人前になるまでは、ちゃんと育てるようにするべきです」
プロ野球のコーチは大半が元選手であり、現役を退いた翌年からコーチに就任するケースが多い。そうなると、どうしてもコーチが頼るのは、自らの経験である。だが、こうした指導法に選手が合わなければ、一軍で活躍できないまま、ユニフォームを脱ぐという“不幸な結果”を招くことは珍しくない。
実戦では感覚的な部分も重要
ただし、何でも科学的な知見に頼った指導をすれば、万事うまくいくのかというと、そうでもないという。
「最近では、様々なデータをとりながら、コーチが選手を指導するケースが増えていますね。筋力やボールの回転数、フォームに関するあらゆるデータを参考にするのは、もちろん良いことだと思いますが、データに頼りすぎる指導法もよくないです。例えば、一軍での活躍が期待されて入団した投手が、筋力が弱いというデータが得られたため、トレーニングや遠投ばかりやっていたら、実戦から遠ざかり過ぎてしまい、ピッチングのパフォーマンスが落ちたケースもありましたね。数値だけを鵜呑みにするのではなく、選手の感覚とすり合わせながら、進めていくことが重要だと思います」(前出のベテラントレーナー)
2020年にメジャーでサイ・ヤング賞を獲得し、今年からDeNAに移籍して10勝4敗、防御率2.76という好成績を残したバウアーは、練習で科学的なアプローチを用いながら、実戦では数値で表現できない感覚的な部分が重要だと話している。
ルーキーイヤーで故障すれば、プロで全く活躍できずに現役を終えるリスクは当然、大きくなってしまう。そんな“悲劇”を招かないためにも、アマチュア、プロの双方で新人選手の体を守る指導法を定着させるべきはないだろうか。
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