月9「ONE DAY」 3つのストーリーが同時進行する異例のドラマ、最大の弱点は?

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勝呂寺は「アネモネ」に潜入した麻薬捜査員か

 勝呂寺の本名は天樹勇太。桔梗が卒業した大学の後輩(2回)で、5年前には「アネモネ」内でメキシコマフィアとの麻薬取引を成功させた(1回)。桔梗、立葵の近くにいた時期と重なる。

 勝呂寺は「アネモネ」に潜入した警視庁の麻薬捜査員なのではないか。麻薬捜査員の所属は蜜谷と同じ組織犯罪対策部なので、辻褄は合う。潜入捜査員は身の安全を守るため、偽名を使う。この仮定が事実なら、蜜谷が神奈川県警に勝呂寺の情報を要求していることの説明がつく(1回)。一方で、「アネモネ」が勝呂寺を怪しんでいても不思議ではない(5回)。

 さらに考察を広げると、フリージャーナリストを自称している八幡柚杏(中村アン・36)も警視庁の人間ではないか。勝呂寺と蜜谷の行動を知りすぎている。八幡は赤いスポーツカーに撥ねられた蜜谷の収容先も掴んでおり、その病院を訪ねた(5回)。マスコミがここまで警察情報を収集できるとは思いづらい。

 一方、桔梗は部下の立葵査子(福本莉子・22)が撮ってきた立葵の映像を観て目を見張り、査子に対し「あなたのお父さんなの?」と尋ねた(3回)。2人の交際の深度は今後明かされるだろう。交際復活を含め、クリスマスイブらしい展開になるのではないか。

主演3人の演技は一見の価値あり

 二宮、中谷、大沢の演技は見応えがある。二宮は役柄によって雰囲気まで変えられる人だから、勝呂寺役の時は周囲に漂う空気までアウトロー。一方で天樹は完全無欠の好青年だ。「逃亡編」はセットやライティングが凝っており、無国籍感に満ちている。

 中谷が演じる桔梗は報道キャスターそのものだ。スクープばかり狙っている姿は少し鼻につくぐらいリアル。社長の圧力でその取材成果の放送がストップされると、陰に隠れて号泣したが、これも真に迫っていた(4回)。泣き顔の演技はやり過ぎになったり、ウソ泣きにしか見えなかったり、実は難しいが、実力派の中谷らしかった。

 大沢が扮する立葵は、5回まではコメディリリーフ。いい人なのだが、見栄っ張りでナルシストで、頑固。うんちく好きなのも厄介だ。いつもと違った大沢が観られる。本人も愉しげに演じている。

 助演陣もいい。「逃亡編」での蜜谷役・江口洋介はアウトロー刑事そのもの。昭和期なら原田芳雄さんがやっていたような役である。最終的に蜜谷は善玉という気がするが、無頼派も悪役も似合う俳優になったこと知らしめている。

 さて、「ONE DAY」関係者はクリスマスイブに笑顔でいられるか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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