月9「ONE DAY」 3つのストーリーが同時進行する異例のドラマ、最大の弱点は?
3つあるストーリー自体は割と平凡
「逃亡編」のカラーはハードボイルド・アクション。特撮だと分かっているとはいえ、逃げている勝呂寺が警察署の屋上から隣のビルの屋上に飛び移ったシーンにはヒヤリとさせられた(2回)。
「地方テレビ局編」は熱血キャスター・桔梗を中心とする業界ドラマ。桔梗は勝呂寺が容疑者とされている射殺事件の真相解明に熱を入れている。部下に向かって「スクープ獲ってきて!」と叫ぶことも(2回)。
「レストラン編」はハートフル・コメディ。まず逃走中の勝呂寺が「葵亭」に入り込み、それを追った立葵が、秘伝のデミグラスソースの入ったズンドウを倒してしてしまう(1回)。クリスマスディナーを控え、頭を抱える。このストーリーには恋愛要素も加味されている。
ここで、あることに気づく。特殊なドラマだから、おそらく脚本作成も撮影も編集も苦労が絶えないだろうが、一方で3つあるストーリー自体は割と平凡なので、強くは惹き付けられない。これが視聴率の上昇を阻んできた最大の理由ではないか。
視聴率は10月9日の初回が個人4.8%(世帯7.8%)。それが2回に急落。個人3.3%(世帯5.5%)に。以来、浮上せず、11月6日放送の5回は個人が3%を割り込み、2.8%(世帯4.8)だった。ただし、コア視聴率(13~49歳に限定した個人視聴率)は全連ドラの中で中位以上を常にキープしている。
少しずつ面白くなってきた「ONE DAY」
次の放送は6回。3つのストーリーはこれからが佳境だ。視聴率は個人3%割れで底を打ったのではないか。連ドラの中には浮上の見通しのない絶望的な作品もあるが、「ONE DAY」は少しずつ面白くなってきた。3つのストーリーがつながってきたからだ。
過去5回のポイントを整理したい。親切なドラマとは言い難いので、漫然と観ていると大事な場面を見過ごし、五里霧中をさまよいかねないからだ。先のストーリーの考察も少しだけしておこう。
初回。桔梗と立葵は横浜・クリングル号記念公園で会っていた。時は2018年。桔梗は立葵に「ありがとう、さようなら」と告げた。立葵の妻は亡くなっているから、2人は交際していたのか。勝呂寺も2人の近くにいた。
それから時は流れ、2023年12月23日午後11時30分。勝呂寺は誰かに襲われ、倒れていた。目覚めると、近くにはピストルがあり、組織の仲間・榊原が撃ち殺されていた。直後、警視庁の組織犯罪対策部の管理官・蜜谷満作(江口洋介・55)と思しき人物から電話で「逃げろ」と指示される。勝呂寺の逃亡が始まる。勝呂寺は記憶を失っていた。
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