立浪中日、今年のドラフト戦略に「ビジョン」はあったのか? 「フロントの責任逃れ」を指摘する球団関係者も

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球団の体質は改善したか

 監督の意見を聞くのは当然のことであり、また要望を出すことも間違いではない。とはいえ、実際に指名する選手を決めるのも、監督の言う通りになってしまうのであれば、編成部長やスカウト部長がいる意味はなくなってしまう。

 立浪監督にとっては就任3年目の2024年が“勝負の年”となる。監督の要望を聞きたいという気持ちは分からないわけではないが、ドラフトは、チームの将来に向けた補強であり、編成の責任者が決定して、その責任を負うべきである。

 立浪監督は、スカウト会議の冒頭で、来年だけでなく将来を考えて、スカウトに忌憚のない意見を求めたということが報じられている。だが、度会を1位指名した点、2位と3位でもショートの選手を優先して指名した点は、立浪監督の意向だと言われており、結局、編成やスカウト陣の意見が反映されたような指名には見えなかった。

「結局、誰も立浪監督に意見ができない表れだと思います。シーズン中の選手起用や指導についても、監督の言うことが全てになっています。間に入っているコーチ陣も選手に対して、『悪いけど、この方針でやってくれ』と言うこともあると聞きますね。もう一つは、フロント側の“責任逃れ”もあるのではないでしょうか。仮に指名した選手が活躍できなかったとしても、立浪監督の意向が強かったのだから、編成側に責任はないと言うことができる。編成の上層部の中には低迷しているチームの中で強く主張して、責任を取らされるのを避けたいと考えている人もいると思います」(前出の関係者)
 
 昨年オフから今シーズン中に行われたトレード、外国人選手の獲得も立浪監督の意向が強く反映されたと言われている。球団の将来を考えて、戦力を整えることが仕事のフロント、編成が強く主張することなく、ただ監督の要望のままにトレードや外国人獲得、ドラフトを実行しているのを見ると、「ビジョンがない」と批判された球団体質は全く改善されているように見えない。

 ただし、戦力補強のチャンスは残されている。昨年、現役ドラフトで獲得した細川成也は主砲に成長した。今後、現役ドラフトやトレードで、ファンに将来への期待を持たせるような補強できるか、注目していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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