昭和の名大関・朝潮 朝青龍騒動で珍回答、初優勝で男泣きした真相…“愛されキャラ”のエピソードが蘇る

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最後の花道は、浪速の地で飾りたい

 この優勝により、綱取り待ったなしとなった大ちゃんだったが、好調の波は持続せず、綱取りに失敗。しかし、そんな大ちゃんに春がやってきた。昭和61年春、知り合ってわずか1カ月という速攻で、22歳の美人OL・芋縄恵さんとの婚約を発表したのだ。

 婚約発表記者会見の席上、恵さんに3.75カラットの婚約指輪を渡したことを問われると、大汗をかきながら、

「もう、金ないス……」

 と、小さくなった大ちゃんに、会場は大爆笑だ。

 大関の座が長くなってきた大ちゃんが、心に決めていることが1つあった。

 最後の花道は、浪速の地で飾りたい。

 平成元年春場所、初日から元気なく4連敗した大ちゃんは、引退の決意を固めた。

「心残りはありません。精一杯やったつもりです」

 しかし、本心は次の言葉にあった。

「でも、横綱になれなかったのが、悔しいです」

 涙のない大ちゃんらしい明るい幕引きだった。

武田葉月
ノンフィクションライター。山形県山形市出身、清泉女子大学文学部卒業。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『横綱』『ドルジ 横綱朝青龍の素顔』(以上、講談社)、『インタビュー ザ・大関』『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士』(以上、双葉社)などがある。

デイリー新潮編集部

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