映画と食の批評家・三浦哲哉が「魚と日本酒」を愛する“意外”な理由とは?

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日本酒づくりは「授かりもの」?

 魚の場合は、ある種の自然からの贈与と考えることができる(乱獲しない範囲での話だが)。海でおいしく育ってくれたところを、おすそわけしてもらっている、と考えられる部分があるのだ。では日本酒の場合はどうなのだろう。

 日本酒づくりもまたある種の贈与である、という考え方がある。たとえば島根の板倉酒造のHPにはこうある。「日本酒は自然や神、ご先祖様からの授かりものであるお米に対して、豊穣と感謝の祈りを捧げるために造られるものです」。日本酒の価格が市場経済にどこか従属しない部分を残す理由の根底には、日本酒が、代々受け継いできた土地からの「授かりもの」である、という考え方があるということだろうか? それが私たちがする「得」のおおもとにはある?

 いささか話を大きくしすぎたかもしれない。何はともあれ、板倉酒造がつくるような安くておいしいお酒(「天穏」のファンです)は、感謝しつつ飲みたい。来客が持ってきてくれるなら私は断然こちらがいい。

三浦哲哉(みうら・てつや)
1976年生まれ。青山学院大学教授。著書に『LAフード・ダイアリー』、『食べたくなる本』、『『ハッピーアワー』論』など。

デイリー新潮編集部

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