「ファミコン誕生40周年」当時どっぷりハマった少年は“中高年”に…飲み会でも「ドラクエ」や「たけしの挑戦状」で盛り上がれる理由

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掃除機をかける母ちゃんが…

・■ボタンはすぐに外れてしまう
・『ドラクエII』の復活の呪文が長過ぎて泣いた
・『ドラクエII』でロンダルキアに着いたらブリザードのザラキ攻撃でそれまでの努力がパーに
・何かと「ゆうべはおたのしみでしたね」と『ドラクエI』のローラ姫と主人公の宿屋チェックアウト時の言葉が書き込まれる
・スペランカーの主人公が弱すぎる。挙句の果てには故障しがちな野球選手のことを「スぺ体質」と呼んだりもする
・ドラクエIIIとIVを買うために学校や会社をさぼって行列に並んだ。しかし不人気ソフトとの抱き合わせ販売攻撃を食らってしまった
・『バルーンファイト』『アイスクライマー』は結局プレイヤー同士の潰し合いに終始する
・『スーパーマリオブラザーズ』で、上の方の道へ行き、コインの数を示すマークのところでしゃがむと「キンタマリオ」になる
・2コントローラーのマイクの使い道が『バンゲリングベイ』と『タッグチームプロレスリング』『たけしの挑戦状』ぐらいしか思いつかない
・『たけしの挑戦状』は難易度が高過ぎる名作クソゲー
・『ポートピア連続殺人事件』にかけて容疑者がなかなか見つからない事件が起きたら、「犯人はヤス」と頻繁に書き込まれる
・『ドラクエIII』で最大の敵はゾーマではなく、掃除機をかける母ちゃんがファミコンのコードにひっかかり「ぼうけんのしょ」が消えること
・『ドラクエIII』でバラモスを倒した後、闇の世界へ行った時のBGMに感動した件
・『イー・アル・カンフー』で、女武闘家がハイキックを出している時にしゃがみパンチを出し、ポーズを押すと痴漢をしているように見える
・『燃えろ!!プロ野球』ではバントでホームランになる選手が一チーム一人いる

昔の名前で出ています

 とまぁ、こんなことをあれから約40年経った今でもいい歳したオッサンが書き込んでいるわけだ。ヘタしたら30年後、ファミコン70周年の時も同じことを喋っているのではなかろうか。結局日本はインターネット時代に世界に通用する巨大プラットフォームを作ることができず、敗北を喫した。

 そうした時代を経て、「着実に売れる」商品としてファミコン関連のものが幅を利かせ続けているのである。日本の敗北と中高年の懐古主義には関連性があるのではなかろうか。『キン肉マン』や『キャプテン翼』の続編がヒットしていることや、80年代の歌に対し、YouTubeのコメント欄で絶賛書き込みが多発していることは日本のイノベーションの力が弱くなったことを感じてしまうのである。現代日本の商品販売戦略と、ネットの書き込みはまさに「昔の名前で出ています」を如実に表している。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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