公開3日で興収10億円超 「ゴジラ- 1.0」は「シン・ゴジラ」を超えることができるか
「シン・ゴジラ」を上回るスタートダッシュ
今月3日に公開された「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」(山崎貴監督=東宝配給)が、5日までの3日間で興行収入10億4119万3460円、観客動員数は64万8577人を記録した。
この数字を2016年に公開され、庵野秀明氏が総監督を務めた「シン・ゴジラ」(総興行収入82.5億円)の公開初日から3日間の成績と比較すると、観客動員対比で114.7%、興行収入対比で122.8%となった。
「ゴジラ」の生誕70周年記念となる今作は、日本で製作されたシリーズの30作目で、舞台は敗戦後の日本だ。戦争によって焦土と化し、なにもかも失い文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現。その圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へとたたき落とすが、戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラに対して生きて抗う術を探る。
「東宝で製作を担うのは、社内に立ち上げられた『ゴジラルーム』と呼ばれる精鋭を集めたチームです。大前提としてゴジラは永久不滅なキャラで同社のキラーコンテンツ。今後も続編の製作が続くことでしょう」(映画ライター)
ゴジラに立ち向かう主人公・敷島浩一を神木隆之介(30)、ヒロイン・大石典子を浜辺美波(23)が演じたが、2人は今年4~9月に放送されたNHK連続テレビ小説「らんまん」でも夫婦役を演じて、話題を集めたばかりである。
「前作の『シン・ゴジラ』は主演の長谷川博己をはじめ、竹野内豊、石原さとみ、高橋一生、國村隼、平泉成、柄本明、大杉漣ら、若手からベテランまで豪華キャストが勢ぞろい。ほかにもチョイ役で斎藤工、前田敦子、ミュージシャンのKREVAらを“無駄遣い”し、総キャスト328人というのも話題になりました。それに比べ、今作は神木、浜辺のほかは安藤サクラ、佐々木蔵之介、吉岡秀隆、山田裕貴ら主軸のキャストをがっちり固める布陣。役者1人1人が持つ演技力が存分に発揮されています」(映画担当記者)
「シン・ゴジラ」のキャッチコピーは「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」。舞台は現代の日本で、自衛隊を中心として日本の国力を結集させてゴジラに立ち向かう姿が描かれた。大ヒットを受け「シン・ゴジラ」が「2016 ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされ、「第40回日本アカデミー賞」では「最優秀作品賞」を受賞するなど各映画賞を総なめにした。
2020年は、新型コロナウイルスの影響で全国の映画館が軒並み休業。映画館の営業が再開した都道府県では新作の上映が出来ず、本作品のリバイバル興行が行われたが、同年5月16日と17日の「国内映画ランキング」(興行通信社調べ)で6位にランクインし、劇場の窮地をゴジラが救ったのである。
「シン・ゴジラ」との違い
あらゆる意味で“強力”な前作を凌げるのか……。
今作は、特攻隊の生き残りで戦争から生還するも、両親を失った主人公の敷島(神木)と、焼け野原の日本をひとり強く生き抜く典子(浜辺)が出会い、ストーリーが展開する。
敷島は特攻隊の飛行機の修理基地となった離島にいた際にゴジラの襲撃を受け、死のトラウマ、さらには死にきれなかった葛藤を背負いながら悶々とした日々を送っていた。一方、典子は貧困をしのぐために盗みを働いて逃げている時に敷島に出会い、戦死した知り合いに託された子供を連れていたが、敷島の自宅に転がり込むことに。奇妙な3人の同棲生活が始まったが、いつの間にか幸せな家庭を築いていた時、その平穏をぶち壊すかのようにゴジラが来襲する。
「前作の登場人物の大半は総理大臣以下、主要閣僚と内閣の中枢にかかわる官僚や学者、そして自衛隊員。つまり、ゴジラが襲来して来たら、あらゆる法令や武器を駆使して立ち向かう立場の人間ばかりでした。突然、出現したゴジラに対し、日本の“頭脳”とも言うべき科学者たちのデータや分析を総動員、そして自衛隊が持つ最新兵器でゴジラに立ち向かう……とはいえ、観る側からすると、普段はなじみのない官僚や政治家の“力学”や、自衛隊の戦車が一斉砲撃を行うなど、現実離れしている内容でした」(同)
だが、今作はかなり違う。国のために命を投げ出す覚悟だったのにそれが叶わず、複雑な思いを抱えて生きている、神木演じた特攻隊の生き残り。そして焼け野原の日本で、一人たくましく生きていく孤独な女性の浜辺といった、本来ならゴジラに立ち向かう必要のない「庶民側の目線」がたっぷりと描かれている。
「ゴジラに立ち向かう術も、当時の科学的な知識や、使用できる兵器などが丁寧に描かれていて分かりやすかったです。山崎監督得意の映像技術・VFX(ビジュアル・エフェクト)もふんだんに取り入れられていますが、見事に作品に溶け込んでいました。とはいえ、戦後の日本は米軍の占領下で、まだ自衛隊はありません。ゴジラに立ち向かうにあたり、米軍が協力するのか、どうやって戦力を集めるのか、どういう兵器を使用するのかが気になりましたが、その疑問は一つ一つ丁寧に解明されますが、『なるほど!』と納得させられました」(同)
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