大流行「インフルエンザ」の裏で深刻化する「薬不足」 臨床試験大詰めで注目を集める米モデルナ社「mRNAインフル・コロナ混合ワクチン」本当の評判

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コロナワクチンと原理は同じ

 新型コロナが感染症法上の「5類」に移行してから半年が経つが、新規感染者数は約1万4000人(10月23日~29日)と、8週連続で減少中。しかしコロナは毎年「冬に流行が拡大」する傾向があり、今冬はコロナとインフルの同時流行(ツインデミック)が危惧されている。

「遺伝物質であるmRNAを使ったワクチンは、従来の不活化タイプのインフルエンザワクチンとは仕組みが異なります。モデルナはコロナワクチンと同じメカニズムを用い、インフルエンザウイルスの表面にある赤血球凝集素、ヘマグルチニン(HA)を攻撃する抗体をつくりだすワクチンの実用化を進めています」

 mRNAとはインフルンザやコロナウイルスの「設計図」に当たり、そのなかには攻撃対象となるたんぱく質(コロナの場合はスパイクたんぱく質、インフルエンザではHA)の設計図も含まれ、ピンポイントでの攻撃を可能にしているという。

「短期間で大量生産」

 一方で見過ごせないのは、作用のメカニズムが同じであることから「副反応」もmRNAコロナワクチンと同程度と考えられている点だ。個人差はあるものの、強い副反応に苦しんだ経験を持つ人は少なくなく、仮に承認されても敬遠して使わない人たちが一定数出てくることも予想されるという。

「モデルナが公表している混合ワクチンの臨床データを見ると、健康な成人男性を対象としたものではインフルエンザに対する抗体の量が従来より多く出ているとの結果です。モデルナ製のコロナワクチンの発症予防効果は約2か月、重症予防効果は少なくとも半年は持続する。混合ワクチンでも、インフルエンザへの効果は従来のワクチンの持続期間である5か月程度か、それ以上が見込まれると考えられています。またmRNAタイプのワクチンは短期間で大量生産できる特性があり、感染症の流行が拡大した時により効果を発揮すると、一部の医療現場からは期待の声も上がっている」(寺嶋氏)

 ただしmRNA自体が不安定な物質のため、モデルナ製のmRNAワクチンはマイナス20度前後の超低温保管が求められるなど、取り扱いは簡単でないという。つまり承認されても個人クリニックなどでの処方は難しい可能性も残されている。まさに“一長一短”。効果はあっても、副反応のトラウマを持つ人にとっては「一挙両得」のワクチンとは映らないかもしれない。

デイリー新潮編集部

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