「news zero」で櫻井翔を続投させる日テレの特別な事情 ニュースキャスターをタレントにやらせる危うさとは

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タレントMCは日本だけ

 そもそもニュース番組のキャスターをタレントにやらせる先進国は 日本だけ。米CNN 「アマンプール」のキャスターであるクリスティアン・アマンプール氏はユネスコ親善大使でもあり、国際問題なら外交官並みかそれ以上に強い。

 英BBCニュース(旧BBCワールドニュース)「BBCニュース・ナウ」のキャスターであるルーシー・ホッキングス氏は、豊富な取材歴と分析力が買われ、国連などの国際会議によく招かれる。他国のキャスターはキャリアを競うのである。日本とは比較にならない。

 ニュース番組のタレントキャスターは報道倫理に触れる疑いすらある。日本民間放送連盟(民放連)報道指針の中にはこうある。「取材・報道の自由は、その使命のために、市民からわれわれに委ねられたものである。この自由は、あらゆる権力、あらゆる圧力から独立した自主的・自立的なものでなければならない」。

 タレントにとってCMのスポンサーは権力に当たる可能性があるし、圧力をかけられる恐れもある。CM契約中のタレントはスポンサーの悪口を言えない。スポンサーと競合関係にある会社の製品を誉める程度でもペナルティを受けかねない。では、そのスポンサーが企業犯罪や社会問題を起こした時、どうするのか。

 これも非現実的な話ではない。ビッグモーターのCMに出ていた佐藤隆太(43)がキャスターだったら、どうなっただろう。万一、ビッグモーターを庇ったら袋叩きに遭うし、貶したら同社が激怒するはず。口を閉ざせば視聴者が納得しないだろう。

 櫻井も性加害問題で降板させられるまで、アフラック生命保険などのCMに出ていた。キャスター就任は不適切だったとしか言いようがない。キャスターをやりたいのなら、CMは引き受けるべきではない。「この会社は大丈夫」とは誰にも言えない。

 先進国にタレントキャスターはいないが、CMに出るキャスターというのも聞いた試しがない。性加害問題を機とし、原則に戻すことを洗い出すべきではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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