「news zero」で櫻井翔を続投させる日テレの特別な事情 ニュースキャスターをタレントにやらせる危うさとは

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報道・情報番組の常道を逸脱した日テレとテレ朝

 ただし、櫻井がキャスターの立場を逸脱し、番組にも首を傾げる部分もあった。

 5月14日、当時のジャニーズ事務所社長(現SMILE-UP.取締役)の藤島ジュリー景子氏(57)が、動画で性加害問題による騒動を謝罪した。すると、翌15日の放送で有働由美子アナ(54)が「この件については番組で話し合って私が話します」と説明した。櫻井は沈黙を守った。

 ここまでは報道・情報番組の常道が貫かれていた。ところが、6月5日放送では櫻井も性加害問題について言及する。

「あらゆる性加害は絶対に許してはならないし、絶対に起こしてはならないと考えています」(櫻井、6月5日放送「news zero」)

 沈黙を猛批判されたことも背景にあったのだろうが、キャスター自身が利害当事者であることを番組内で語るのは常道を逸していた。

 櫻井より先に口を開いたのはSMILE-UP.社長の東山紀之氏(57)だった。5月21日、メインキャスターを務めていたテレビ朝日「サンデーLIVE!!」(日曜午前5時50分)において「ここで少しお時間をいただきます」と切り出し、「私自身の考えを伝えさせていただきます」として性加害問題を語った。

 これもテレ朝と東山が報道・情報番組の常道を逸脱していたと言うほかない。番組側がキャスター個人に時間を与え、彼らの利害に深く関わることを語らせたら、編集権の放棄と見られても仕方がない。いくらキャスターが私情を挟まないと思っていようが、同じことだ。

番組を離れた立場で発言すべきだった

 ほかのキャスターに置き換えてみれば分かる。あるキャスターの家族や親族が刑法犯で逮捕されたり、スキャンダルで追及される側になったりした時、キャスターが「ここで少しお時間をいただきます」「私自身の考えを伝えさせていただきます」などということが許されるはずがない。ありえない状況ではない。キャスター本人すらスキャンダルを起こす時代なのだから。

 新聞記事も同じ。記者に親族が起こした事件の取材と執筆をさせる無軌道な新聞社は存在しない。

 では、東山氏はどうすべきだったか。利害当事者なのだから、いくら批判されようが番組内では沈黙を守るべきだっただろう。発言したいのなら、番組を離れた立場ですべきだった。

 日テレの場合、6月5日放送の「news zero」で櫻井に話させてしまったことの是非を問う議論があったのではないか。東山氏とジュリー氏らの記者会見があった9月7日の放送にも櫻井は登場したが、スタジオでの生出演ではなく、VTRのみだった。これなら利害当事者ではない有働アナのペースで進められるし、編集も可能だから、ギリギリの線だと考えたのだろう。

 両局とも旧ジャニーズ勢をMCに迎えたことで面倒に巻き込まれた。最初から起用しなければ良かったのである。そうであるなら、降ろす、降ろさないという騒ぎにもならなかった。両局の首脳はともにジャニー喜多川氏(2019年に87歳で他界)の行状について知っていたに違いないのだから。長く社会問題化しなかったので、このまま封印されるとの希望的観測を抱いていたのではないか。

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