岸田政権の肝いり「ライドシェア」は本当に安全か? 「性的暴行」に「殺人」まで起きていた導入先進国「中国」の“凶悪事件簿”
気になる「安全対策」の中身
5月の事件が起きたのは河南省鄭州。21歳の女性が勤務後にDiDiで車を呼んで以降、プツリと連絡が途絶えたのだ。
「女性は車内でドライバーとトラブルになったようで、のちにメッタ刺しにされた状態で死亡しているのが発見されました。ドライバーの男は犯行現場近くの川に飛び込んで自殺。実はこの男、交通事故や強盗などの前科がありましたが、父親の名義を使って登録していたことが事件後に発覚した。当時、DiDiにドライバー登録するには運転免許証など数点の必要書類が揃っていれば、形式的な審査だけで研修もなく、ほぼ誰でも登録できる状態にありました」(同)
実は16年にも広東省深圳市でDiDiを利用した24歳の女性がドライバーに金品を奪われて殺害される事件が起きていたことも判明。地元メディアは当時、「過去4年間でDiDiドライバーによる性犯罪事件が50件起きていた」と伝えている。殺害事件にまで至らずとも、DiDi利用時にセクハラや暴力行為を受けた事例が多数あることも明らかになり、DiDiへの批判が沸騰することになった。
「高まる批判を受け、DiDiは事件後、登録審査を厳格化したほか、就業前にドライバーへの顔認証テストをルール化。さらに車内の録画機能の強化やアプリ起動時に録音を可能にするなど、安全対策の向上をアピールした。しかし、それでもライドシェアをめぐる凶悪事件が完全になくなったわけではありませんでした」(同)
中国にはDiDi以外にもオンライン配車サービス会社が200以上あるとされ、登録審査がユルい業者も混在。20年12月、DiDiではないプラットフォームに登録していた35歳のドライバーが乗客の女性(30歳)を人里離れた場所に連れ込み、ナイフで刺して性的暴行。その後、近隣の病院前に女性を投げ捨てて行方をくらます事件が起きた。犯人のドライバーは事件後に自殺を図ったと見られているが、悲劇のあとに対策を強化するという“イタチごっこ”はいまも続いているという。
共同通信の調査によれば、全国47自治体のうち、9割に当たる44都道府県がライドシェア導入に向けた「具体的な検討に入っていない」と回答。“笛吹けど踊らず”なのは、政府が「結論ありき」で議論を進め、不安の解消に努めていないことも一因だろう。