惜しまれつつ終了「新幹線の車内販売」ワゴン1台は「100万円超」で驚きの高性能を誇る逸品だった

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社員寮も必要に

 仮にこれだけの本数の列車に毎日車内販売の担当者を乗せるとすれば、おおまかに言ってもいま試算した153人に対して少なくとも3倍程度の459人は待機していなくてはならない。

 この人たちを確保して穴が空かないようにシフトを組むのは一大事だ。人事担当者は胃が痛い毎日だっただろう。

 なお、言うまでもなく、早朝発、深夜着の列車に乗務する担当者のために社員寮を用意すれば費用もかさむ。という次第で、10年間で売り上げがほぼ半減となりながらも、それでも車内販売を続けるべきだと言うのは、恐縮ながらブラック企業の経営の素養がある人だと考えざるを得ない。

 ここまでワゴンによる車内販売中止の理由を挙げてはきたものの、それでも利用したい人は皆無にはならないであろう。
最近では一部のファミリーレストランでは移動式のロボットが料理を運んでくれる。モバイルオーダーサービスが提供されない東海道新幹線の普通車でも、飲み物などを注文して決済した後、ロボットが届けてくれるサービスが実用化されれば、乗客も鉄道会社側も不満はない。

 その意味でも今回の東海道新幹線におけるワゴンでの車内販売の打ち切りは、新たなサービスが開発されるまでの準備期間ととらえておいてもよいのかもしれない。

梅原淳(うめはら・じゅん)
1965(昭和40)年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊「鉄道ファン」編集部などを経て、2000(平成12)年に鉄道ジャーナリストとしての活動を開始する。著書に『JR貨物の魅力を探る本』(河出書房新社)ほか多数。新聞、テレビ、ラジオなどで鉄道に関する解説、コメントも行い、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談室」では鉄道部門の回答者を務める。

デイリー新潮編集部

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