惜しまれつつ終了「新幹線の車内販売」ワゴン1台は「100万円超」で驚きの高性能を誇る逸品だった

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「単なる台車」では全くない

 ところで、単なる台車に思われがちなワゴンそのものにも多数の工夫が施されている。たとえば、ワゴンに装着されている4輪のタイヤは騒音を減らすために空気入り仕様の高級版だ。とはいえ、タイヤの空気が抜けたからと言ってそのたびに空気入れで充填していたら大変なので、メンテナンスフリーの特殊なタイヤが採用された。

 ワゴンの骨組み部分の材質も鉄だけではないらしい。上段、下段とも40キログラムずつ、合わせて80キログラムもの重さに達する商品を搭載してもたわまず、しかも多くは女性の担当者が無理なく押せる性能がワゴンには求められる。素材は非公表ながら、恐らくはアルミニウム合金だとか一部にマグネシウム合金といった材料が用いられているようだ。

 特殊タイヤに高級な素材というからワゴンは高価だという。金額はこれまた非公表ながら、軽自動車1台分くらいだそうだ。

 今日、軽自動車のなかで最も売れているホンダのN-BOXのメーカー小売価格は164万8900円~236万2800円だから、相当高価に思われる。どうやら小型自動車に比べて軽自動車が安いと考えられていた当時の世相を反映しているようで、金額は恐らくはもう少しは安く、おおむね100万円前後であろう。それでもワゴンが高価であることに変わりはない。

 新幹線だけではなく、ワゴンもまた日本の技術力が結集した逸品だったと言えそうだ。

「年中無休の職場」に必要な人員数とは?

 JR東海が挙げた「将来にわたる労働力不足への対応」という最後の理由については、もっともだと筆者も考える。

 2023年3月18日実施のダイヤ改正で東海道新幹線で平日に毎日運転される「のぞみ」は新大阪方面84本、東京方面80本の計164本、「ひかり」は新大阪方面33本、東京方面32本の計65本、合わせて229本の列車に車内販売の担当者が乗務することとなっていた。日中の「のぞみ」を中心にワゴン2台という体制で、つまり最低2人は車内販売の担当者が乗っていなくてはならない。

 仮にいま挙げた229本の全列車で2人がワゴンで車内販売を行うとすると必要な担当者の人数は458人となる。実際には1人の担当者が1日に東京-新大阪間を最大1.5往復するそうなので、もう少し必要な人数は減っていく。全員が1日3本の列車に乗務するとして必要な人数は153人となる。

 けれども、東海道新幹線は年中無休で、そのうえ朝6時から深夜零時まで営業を続けている。たとえば首都圏在住の担当者が業務を終えて深夜の新大阪駅に着いたとすると、JR-CPが保有する社員寮に宿泊するのだという。

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